真昼の情事
―休日編―
２.
純はぴくんと震え、綿毛のような吐息を漏らす。雪仁は滑らかな質感とまろやかな弾力性を味わいながら、
「不思議だ……。まだ練乳かけてねえのに、ミルクの匂いがする……」
うっとりと呟いた。そうして歯を立て舌を這わせつつ、徐々に脚の付け根へ、皮膚の敏感な部分へと進んでゆく。やがて柔らかな茂みが頬を撫でたところで、ようやく顔を上げた。
「純さん……身体を後ろへ倒してください。そう、俺の腕に預けて……」
純は言われた通り、雪仁の腕に身体を預けてそのまま後ろへ倒れ、テーブルの上に仰向けになった。
「背中、痛いですか？」
「ん……だいじょうぶ………」
雪仁は頷きを返すと、剥き出しになった純の局部に練乳をとろとろと垂らした。白くて密度の高い液体に塗れたペニスは、恥ずかしそうにぴくぴく震えながらも少しずつ形を変え始めていた。
「すげえ旨そう………」
正真正銘の食欲が混じった熱っぽい感想を漏らし、雪仁は誘われるようにその部分を口の中に収めた。
「ふぁ…ん………ぁっ、ぁぁっ…………」
じゅっじゅっと生々しい吸い上げ音が響くたびに、四肢を甘痒い電流が駆け巡る。純は指を食みつつ貪欲にその快楽を追い求めた。
「純さんの蜜と練乳が、いい具合に混ざってますよ。最高のデザートだ」
雪仁はそう言って新たな練乳を純の先端に塗り込め、小さなくぼみをぐりぐりと揉む。そして溢れた愛液を一滴もこぼさないよう、舌で丁寧に舐め取って味わった。
「ゆきひとく………もう、ああ………もうぼくぅ…………」
雪仁は執拗に舐めながら、「もう、何ですか？」と意地悪く問う。
「欲し…の………おねが…い………」
「今食事中なんで、少し待っててもらえますか？」
雪仁くんのいじわる、そんな甘えた非難が返ってくると予想していたが、見事に裏切られた。純は自ら腰を浮かせて練乳に塗れた蕾を晒し、
「ここ……もっとおいしいよ、きっと……。食べて、ね……？」
「純さんッ………」
やっと優位に立てたと思ったのも束の間、すぐに引きずり下ろされる。そんな自分の不甲斐なさを呪う間もなく、雪仁は露わになった蕾に指を突っ込んでガツガツと掻き回した。
早くここに挿れたい、ここを味わいたいという明らさまな欲求に突き動かされた慎みに欠ける行為だったが、反省する余裕もない。快楽に馴らされた純の秘部は、間もなくクチャリと蕩けて指に絡み付いてきた。
雪仁は発情という表現が相応しいほど息を荒げて前を解放し、そそり勃つ陰茎を無造作に掴んだ。
「挿れるぞっ………」
何とか人間の言葉を発して、真っ赤に膨れ上がった先端を押し付ける。待ち切れないとばかりに吸い付いてきた花びらを巻き込みつつぐにゅぐにゅと埋め込むと、熱くうねる粘膜の歓迎を受けて低く呻いた。
「ぐっ……ぅ、ぅ…………」
純はテーブルにカリカリと爪を立てて切なく喘ぐ。
「あ、あっ……もっと、もっと奥ぅ………きてぇ…………」
雪仁は飢えた眼差しで純の全身を犯しながら、膝裏を押さえ付けて腰を打ち付ける。ぐちゃっと音をたてて根元まで押し込んだ次の瞬間ずるりと引き抜くと、ねばついた白い練乳が幾筋も糸を引いた。
「もっと……食べてぇ………ああああ………イイ、イクぅぅ……………」
ほとんど凶器と化した雪仁の怒張だったが、時にはきつく締め付け、時には熱く波打つ柔肉の攻めには敵わない。陥落を自覚した雪仁は、度を超した快楽に眉をしかめつつ角度をつけて奥をズボズボと穿った。
その瞬間、純の蜜壷はこれまでにない激しい収縮を見せ、悩ましい悲鳴を上げながら白い糸をびゅくびゅくと放った。
「あ………あん………すご…ぉい…………」
股間をぎりぎりと押し付けて延々と注ぎ込む雪仁を、先に射精を終えた純は恍惚と眺める。徐々に下腹を侵蝕する雪仁の熱情に、身体ごと融けてしまいそうだった。
「純…さん………ここで抜いていいですか？」
何故そんなことを訊ねるのかと言えば、ここで抜いたら大量の精液がどぷどぷと溢れてテーブルの上に広がってしまうから。しかし純はふふっと笑って、
「いいよ……。床もフローリングだし。だいじょうぶ」
雪仁は純の腰を掴んで、ズルズルと自身を引き抜いた。その硬さも太さも、まだまだ足りないことを物語っている。そしてぐぷ、と音をたてて全て抜くと同時に、白濁した濃厚な液体が次から次へと溢れ出てきた。
「すげ……どっちが練乳だか分からねえや」
その量と濃さに我ながら呆れた雪仁は、微妙な感慨を漏らしつつ純の身体を抱き起こした。取り敢えず床の上に座らせ、四肢を絡めて抱き締める。
「ごちそうさまでした。最高のデザートでした」
「どういたしまして。お味は？」
濡れた陰部をぬるぬるとすり付けて訊ねてくる純に、雪仁は呼吸が再び荒れるのを自覚しつつ、
「練乳より甘くてとろとろで、イチゴよりみずみずしくて……」
答えながらも後ろの割れ目に指を滑らせて、甘くてとろとろでみずみずしい花芯に指を突っ込んだ。純は「あふぅ…ん」と小さく喘いで、
「ね、一緒にお風呂入ろうか……」
雪仁は言葉を返すのも忘れてせかせかと抱き上げ、風呂場へ直行した。
まだ昼間ということもあって、浴室は大きな窓から降り注ぐ蜂蜜色の陽光に満たされていた。２４時間いつでも入浴可能なお風呂は、浴槽のふたを開けると乳白色の湯気がもわもわと舞い上がり、ちょうどいい湯加減であることが分かる。
純を抱いたまま浴室に入ってきた雪仁は、取り敢えずぬるめのシャワーで身体についた練乳の残滓を洗い流してやると、もう一度抱き上げてそのまま湯船に浸かった。
「なんか……変な感じだ。こんな時間に風呂に入ることなんて滅多にねえし。しかも純さんと一緒に………」
「そうだね。一緒にプールに入ったことはあるけど、お風呂は初めてだもんね」
純は笑って、雪仁の胸に自分の胸をぴったり寄せてきゅっと抱き付いた。
「純さん……」
キスしていいですか？と問うまでもなく、二人の唇は自然に近付いて重なった。舌の表面をざらざらとこすり合わせると、純は「ん…ふぅん」と鼻にかかった気持ちよさそうな喘ぎを漏らした。
今度は舌の裏側をついと舐め上げる。すると湯の表面がちゃぷちゃぷと波打った。純が湯の中で腰を揺らしたのだ。唇を離して暫し熱い視線を交わす。やがて純はふふっと笑い、
「雪仁くん、身体洗ってあげる」
自ら率先して浴槽を出た。雪仁も続いて出たが、股間のモノは見事に天井を睨んでいた。真っ赤に膨れ上がっているのはもちろん、湯にのぼせたせいではないだろう。
淡白色の湯気がたちこめるパステルカラーの浴室で、それは余りに絶大な存在感を放っていた。純の目は思わず釘付けになり、ぱちぱちと瞬きしつつじぃっと凝視してしまう。雪仁は少し恥ずかしそうにふいと横を向き、
「あんまり見ないでください。どうせヤリたい盛りのケダモノですよ」
しかし言い終わらぬうちに純の両手でふんわりと包まれ、びくっと身体を震わせた。
「純さん、何を―――」
「そこに座って」
きつい口調ではなかったが、何故か抗い難い力を感じて雪仁は言われた通り浴槽の縁に腰を下ろした。
純は雪仁の脚の間に身体を置いてぺたんと座り、上半身を前傾させる。するとちょうど口の位置に、狂おしいほどの怒張を見せる雪仁自身が。
純は僅かなためらいも見せず先端を口に含み、やわやわと歯を立てながら徐々に深く咥え込んでいった。
「じゅ、純さん何をっ―――」
驚いたのは雪仁だ。まさかこんなことをしてもらえるなんて、小指の先ほども思っていなかった。
純の口淫なんて、夢や妄想では何度もしてもらっていたけれど、実際に放った精液を受け止めてくれるのは自身の右手だったりパジャマのズボンだったり。
終えた後は余りに虚しくて、もう純のフェラを妄想して自慰するのはやめようと言い聞かせるのだが、数日後にはもう咥えてもらっていたのだ。
そんな虚しい妄想、儚い夢にしか過ぎなかった行為が、今、現実に―――
「純さん、だめですっ。離してくださいっ………」
強がりとか、紳士を装って好感度を上げようとかそんな思惑からの拒絶ではなかった。ただ、これまで欲望の捌け口として何人もの女性と交わった、お世辞にもきれいとは言えない寧ろグロテスクなモノで純の可憐な唇を汚すなんて、耐えられなかったのだ。
おまけに、先端まで漲る欲望の潮が今にも迸ろうとしている。もしこのまま純の口内に発射してしまったらと考えると―――
「おねがいです……だめだ、こんなことっ………」
純はじゅるんと音をたてて一旦口から抜いた。そしてむきむきと血管の浮き上がった幹につんと尖らせた唇を何度も押し付けつつ、拗ねるような眼差しで見上げる。
「どう…して……？ どうしてだめなの……？」
「どうして、って……で、出ます………」
「いいよ、出して。雪仁くんの欲しい、飲みたい……」
「なっ……ん………」
絶句する雪仁にふふっと艶めく笑みを向けて、純は再び咥え込んだ。さっきよりもさらに深く、先端が喉奥に当たるほど呑み込むと、舌を絡めて吸いながら喉をきゅっと締め付けた。
「ぅぁっ………」
妄想世界の行為の何十倍、何百倍もの快楽が一斉に襲ってくる。口端から唾液をとろとろ垂らしながら雪仁のモノを咥えている純も、妄想の何百倍も淫らで美しかった。
雪仁は片手で浴槽の縁を掴んで身体を支え、片手で純の頭を撫でる。最後の瞬間が訪れたのは、それから僅か数秒後のことだった。
「くっそ………だめだ、出るッ…………」
言葉通り、引き締まった腹筋をびくびく痙攣させつつ純の口内に射精した。魂の根幹を掴んで揺さぶるような快感に悶えつつ、咥えたまま喉を激しく上下させて注がれたものを嚥下する純をぼぅっと見つめた。
最初はこぼさず飲んでいたが、やがて隙間からたらたらと白い液体が滴ってきた。純は口を離すとほぅ、と息をつき、
「ごめんね、全部飲めなかった………すごい量なんだもん」
申し訳なさそうにそう言って、手の甲で口許を拭った。そして付着した白い残滓をぺろんと舐める。
その無邪気であどけない仕草と、行為自体が持つ淫猥さのギャップに、雪仁は今日何度目かの眩暈を覚えた。浴槽の縁から下りて純の身体を抱き締め、
「そんなことより、大丈夫なんですか？ き、気持ち悪くないんですか？」
「ぜんぜん。雪仁くんの、おいしかった」
きっぱり即答を返すと、雪仁の腕の中で嬉しそうにふふ、と笑った。そして顔を上げ、
「ね、今度こそ身体洗ってあげる……」
ボディソープを手に取って、しゅわしゅわと泡立てる。それを雪仁の身体全体にこすり付けて、ゆっくり丁寧に磨き始めた。
「痛くなぁい？」
「はい、すげえ気持ちいいです……」
まずは背中から。そして首周り、腕と移動して胸へ。適度な硬さ、適度な筋肉がついた逞しい褐色の胸に、泡立てたスポンジを滑らせる。
「雪仁くん、ほんとにおっきくなったねえ」
深い感慨のこもった呟きに、雪仁は戸惑いつつも答える。
「そ……そうっすか？」
「うん。会ったばかりの頃なんて、まあ４歳だったから当然だろうけど、こぉんなに小っちゃかったんだよお。それで丸い頬でにこにこ笑って、純たんしゅきー、って」
「………そんな話すんな」
険しい声でぴしゃりと言い置いて、雪仁はふいと横を向いてしまった。
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