十話＜佳月＞
「おはようございます」
いつものように迎えに来た透麻に向かって、いつものように丁寧な挨拶をする。しかしいつもと違って、顔を見合わせた二人は少し照れ臭そうに微笑んで、「今日はよろしく」と言葉を交わした。
そう、今日は久しぶりに二人が組む作品の撮影日なのだ。お仕事シリーズが完結してからずっと、一緒の仕事はなかった。つまり、これが恋人同士になって初めての撮影ということになる。
游月は昨夜、一人で台本をめくりながら不思議な感慨に捉われていた。これまで何本も撮ってきたというのに、透麻の前でどんな演技をしていたのか、女優『晢夜』は何を思い何を感じていたのか思い出せないのだ。
彼の前で冷静に芝居ができていた自分が信じられないとすら思う。だから游月には不安もあった。もしかしたら、カメラの前でどうしてよいか分からず、立ち往生してしまうかもしれない。
果たして自分は、透麻を相手に“演技”をすることができるのだろうか……。
「大丈夫ですよ、游月」
「えっ…？」
突然声を掛けられて、游月は驚いて運転席の透麻を見つめた。透麻は目を細めて頷いて、
「がむしゃらに演じようとする必要はありません。ただ台本の流れに身を任せて、あとはいつものように愛し合えばいい。寧ろ気をつけねばならないのは私の方ですね。つい本名を呼んでしまいそうになるかもしれない。游月、愛してる、と」
游月は小さく笑って、透麻の横顔に優しい視線を送った。
「どうして分かったの？ 僕が不安がっているって」
「だって、思い詰めた顔で台本を睨んでいたではありませんか。それに、私だって不安がないわけではありません。初めての経験ですからね。でも大丈夫。カメラも周囲のスタッフ達も、書割のようなものだと思えばいい。役柄も衣裳のひとつだと思えばいい。愛し合うのは飽くまで生身の人間なのですから」
分かりましたね？ と柔和な口調で念押しする透麻に、游月は頷きを返して、
「分かりました。先生」
透麻は苦笑を漏らし、
「ああ、あなたが優秀な編集者で、私が妻子持ちの大作家ですか。複雑だなあ……妻子持ちの役が来る年齢になってしまったのですねえ」
がくりと下がった肩を、游月はよしよしと撫でて、
「年齢ではなくて、演技の幅の広さが評価されたと思えばいいじゃないですか。ねっ？」
「游月は慰め上手ですね。お陰で少し浮上してきました」
「うわ。透麻さん単純」
車内はいつになく明るい空気に満たされていた。
老舗旅館をイメージした和室のセット。大きな文机に向かい、濃紺の大島紬の着物を着た透麻が座っている。
今時、老舗旅館に投宿して着物姿で小説を書く作家なんているのか、明治の文豪じゃあるまいし、とも思うのだが、こういうレトロさが醸す非日常的な味わいが売りでもあるのだろうと納得して、透麻は時代がかかった大作家になりきるよう努めた。
「今日中にこの原稿を上げるのは無理だ。明日まで待ってもらわねば困る」
「承知いたしました。明日ですね」
游月扮する美貌の編集者は、正座をしたまま深く頭を下げる。そして立ち上がろうとした。すると透麻に腕を掴まれ、バランスを崩して畳の上に倒れ込んだ。
「先生、何を……」
「君も、今夜はここに泊まりなさい。分かったな？」
「いえ、僕は近くのホテルに……」
透麻は最後まで言わせず、游月の身体を後ろから強引に抱き締めて首筋に口づけた。
「先生っ……」
游月の弱々しい抵抗など簡単に封じ込んで、股間に手を伸ばす。そしてあっという間に前を寛げると、下着の中に手を入れて柔らかな性器に指を絡める。
「先生っ、だめです！ やめてください」
「そんなに嫌なら、私を殴って逃げればいい。ほら、手は自由だぞ。遠慮することはない。そのせいで執筆を断ったり、原稿を渡さないなんて嫌がらせはしない。私はそんな小物ではない」
途端に游月の抵抗は終息し、透麻の愛撫に喘ぎつつ身を委ねる。
「できま…せん、そんな……ぁぁ………あなたを殴るだなん…て……」
「なぜだ？ 殴ればいい。間違ったことをしているのは私の方だ」
理性的な言葉を吐きながら、游月を可愛がる手つきはますますいやらしく、執拗になってゆく。いつの間にか片方の手はシャツの内側に滑り込んで、胸の突起を嬲っていた。
「はァ…ン…………せんせ………おねがい…です……これ以上……」
半開きの唇から湿った喘ぎを漏らす游月。透麻は愛しさと苛立ちの混交した眼差しで見据えると、
「なぜ、君が私を殴り、徹底的に拒絶できないのか教えてやろう」
肩口に顔を乗せて、耳許に唇を付ける。そして重厚な光沢のあるバリトンで囁いた。
「君は私を愛している。そうだろう？」
「あっ……ぁぁ……」
“それは……”と一瞬ためらう仕草を見せてから、『愛しています』と台詞が続くはずなのだが、透麻に注がれた甘い媚薬にすっかり酔ってしまった游月は、腰をひくひくと揺らして艶めかしく喘ぐばかり。股間はすっかり濡れそぼり、游月の半身を握っている手は生温かい蜜でどろどろだった。
「どうしたのだ？ そんな……淫らな声を上げて………」
制止がかからないということは、このまま続行していいのだろうと判断した透麻は、アドリブの台詞を挟み込みながら游月を誘導することにした。
とはいえ、ここで游月が『僕も愛しています』と言わないことには、この場面を終えることはできなかった。透麻は、肉厚の花びらのような耳たぶに舌を這わせて丁寧に舐め上げると、耳に唇をぴったり付けて声がマイクに入らないよう配慮しつつ、先刻の台詞以上に甘い低音で囁いた。
「游月、愛してる……」
そして握り込んだ半身を扱く手に力を込める。すると游月は喉を反らして「あぁん」と鳴き、
「僕も愛してるっ」
そして透麻の手の中に熱い飛沫を放った。
「……透麻さん、ごめんなさい」
もうすぐセット変えが終了する頃合だった。次のシーンの衣裳、と言っても旅館だから浴衣なのだが、それに着替えた游月はおそるおそる透麻に近付いて、肩をすぼめて詫びた。
「おや？ そんな縮こまって謝るなんて、游月はどんな悪いことをしたのですか？」
「ひどいっ。僕が真面目に謝ってるのに……」
ぷくっと膨れて上目遣いで睨んでくる。大人びた印象が強かっただけに、最近よく見せるこういったあどけない表情には嬉しい驚きを感じずにはいられない。
游月の違った魅力を味わうことができるのは、自分にだけ許された特権のようにも思えて、透麻は優越感に頬が緩んでしまうこともままあった。
しかしこれ以上にやついては、本当にお姫様のご機嫌を損ねてしまう。透麻は「失礼しました」と前置きして、
「謝ることなんてありませんよ。私の愛撫に感じてくれたのでしょう？ 嬉しいです」
「でも、仕事中なのに……」
「監督にも褒められていたではありませんか。いい表情をしていたと。怪我の功名ですよ。それに、何かハプニングがあればお互いにフォローし合うのは当然です。游月、私が暴走して止まらなくなってしまったら、その時は頼みますよ」
游月はそっと腰をすりつけて、
「嘘……。仕事の鬼の透麻さんが、我を忘れることなんてないでしょ……？」
透麻は、密着してきた腰に腕を巻きつけて答えた。
「ああ、あなたは自分の魅力を過小評価している。今だってもう、この場で押し倒したいくらいなのに。浴衣、よく似合ってますよ」
柔らかなクリーム色の地に、緩やかな波模様の上をゆったりと流れゆく薄紫色の撫子。涼しげでありながらしっとりと優雅な浴衣を着こなした游月は、匂い立つような色気をまとっていた。透麻の称賛にほんのり頬を染め、
「お世辞でも嬉しい。透麻さんも素敵。着崩した感じが……何だか色っぽくてどきどきします」
そして、緩んだ衿元から覗く逞しい胸にすっと指を這わせた。
「游月……撮影前からこんなに私を煽って、どうなっても知りませんからね」
お返しとばかりに腰をいやらしく撫でる透麻に、游月は「いっぱい愛して…先生」と囁いた。透麻は自分の敗北を早々と認めた。
「ぁ………ふ、ぅ………せんせ……も、だめ………」
浴衣の裾を割って脚を大きく広げられた游月は、その中心でたっぷりの蜜を湛えた若茎を透麻に与えていた。
じゅるっ、じゅるっ、という生々しい吸い上げ音が、行灯型の間接照明により淫靡な陰翳をまとった和室に響いて、周囲で二人の情交を見守っている者たち全ての胸を妖しく掻き乱した。
その中には、滅多に現場に顔を出さない社長、真人も混じっていた。
透麻はようやく股間から顔を上げ、唇に付着した游月の蜜を舐め取ると、さっきから埋め込んだままの指を上下に揺り動かして蜜壷を掻き回した。タプ、タプ、と粘膜が騒ぐ淫猥な音が漏れ聞こえて、透麻の雄もぐんと質量を増した。
「ああっ、いやぁ………せんせいきてぇ、おねがいっ」
透麻の指の動きに合わせるように、びくっ、びくっと腰を跳ね上げる。快感に耐えるためか、力の入った両脚は普段以上に引き締まって美しく、女性のものとはまた違った優美なラインを描いて透麻の目を悦ばせた。
「欲しいのなら、自分から来てご覧」
透麻は水音を弾かせて勢いよく指を抜くと、游月の背中に腕を回してゆっくり起き上がらせた。衿元を大きく肌蹴けられ、首や胸に劣情の刻印を散らされた游月は、とろんとした目で透麻を見つめる。
その爛熟した花のような妖美極まる風情に、透麻はもちろん、周囲のスタッフ達も息を呑む。しかしそんな外野の興奮など眼中にないとばかりに、游月は浴衣の裾を絡げて透麻に近付き、その上に跨った。
そして自ら双丘に手を掛けて割り開き、隆々と反り返る透麻自身の切っ先に宛がうと、そのまま腰を落としていった。
「あッ、んあっ……おっきいの……入ってくる……」
「くッ……」
透麻の口から自然と呻きが漏れる。ぬめった熱い内部が吸盤のように密着して、湧き上がる快感が理性を駆逐する。腹にぐっと力を入れて堪えないと、今すぐにも射精しそうだった。
「あ、あっ、せんせ………きもち、いい……」
透麻の必死の忍耐などお構いなしに、游月は腰を上下に振って自ら奥を抉る。辛うじて身体にまとわりついている浴衣は、艶めかしく懶惰な魅力を演出していた。
裾は大きくはだけ、腰を動かすたびに紅くのぼせた性器がぴちぴち跳ねて、先端から透明の飛沫をまき散らす。
「何と淫らな……妖かしの華。やはり思った通りだ。君は……」
透麻は熱病のような官能に眩暈を覚えつつも、何とか台詞を言った。そして游月へ手を伸ばして浴衣の衿をさらに引きずり下ろし、露わになった胸の突起、その先端に游月自身の蜜を塗りつけて、指の腹で円を描くように撫でた。
すでにツンと勃ち上がっていた乳首は、その内側に開花の活力を秘めながら春を待つ桜の蕾のようで、男にしては大きめの乳輪ごと揉み上げると、恥ずかしそうにピクピクと震えた。
「い…やぁぁ………だめぇ、も…ぅ……」
じれったい刺激に弱い游月は、いやいやと首を振りながらも、透麻の上で激しく腰を上下させる。可憐な少女と妖艶な娼婦、その本来は相反するイメージを統合した高みに游月はいた。
「晢夜ちゃん、すげえな……」
滅多に役者を褒めることのない助監督が、熱く掠れた声でぽつりと漏らした。するとそれに同調するように、周囲のスタッフ達も「ああ……」と溜め息をこぼす。誰もが瞬きを忘れた熱狂の瞳で、二人の交わりに引き込まれるように見入っていた。
「君はもう……私のものだ。一生離さんぞ……」
游月がちゃんと応えてくれるか分からなかったが、とにかく透麻は台詞を言った。職業意識からというより、演技にしがみついていないとこっちが持っていかれそうになってしまう。
「ああ……せんせい………でも、あなたには奥さまが……」
游月はたどたどしいながらも、台本通りに応えた。しかし、その喘ぎ混じりの覚束ない口調はこの情欲に沸いた場面にぴったりで、現場の温度をさらに上昇させた。
「馬鹿な子だ……何故そんなことを気にする？ 私が……私が愛しているのは君だけなのに………」
「あ……」
游月はいったん腰の動きを止めて、透麻の顔を見た。
「本当…に……？」
「もちろんだ。愛しているよ」
その時、游月の瞳からはらはらと涙がこぼれ落ちた。台本では、ここでふわりと微笑んで、繋がったまま透麻に抱きつくことになっていた。もちろん、涙などこぼさない。
しかし游月は泣いた。泣きながらたったひと言、「うれしい」と言った。それはもはや、演技ではなかった。透麻の告白に対する游月の悦び、游月の涙だった。
透麻はがばと身体を起こして、繋がったまま体勢を変えた。今度は自分が游月の上に覆いかぶさり、激しい注挿に没頭する。愛しさの余り、我を忘れて。それは台本を逸脱した行為だったが、誰も止めようとはしなかった。
「はあっ、あっ、あっ、ん………もっと、もっと……」
游月も透麻の腰に脚をきつく絡めて押しつけ、交わりを深く濃いものにしようとする。透麻はぎり、と唇を噛んだ。そうしないと、游月の名を叫んでしまいそうだったから。
「愛してる、先生……」
突然の激しい注挿に半ば朦朧としながらも、游月は芝居の体裁を崩さぬよう懸命に振る舞った。その健気さもまた愛しくて、憎らしくて、腰の動きもさらに活気付く。
「先生、などと呼ぶな。君の前ではただの男だ」
透麻は最後の台詞とともに游月の身体を二つ折りにして上からのしかかり、ほとんど垂直にガツガツと打ち込んだ。
「ひぃッ、ぁ…………あああああぁーーーー！」
「ぅ……ぐっ………」
この状態で長時間もつはずもなく、二人はほぼ同時に熱い精を捧げ合った。游月の奥にたっぷりと注いだ透麻は、身体を倒して耳にぷちゅ、と口づけて、小さな声で「游月、愛してます」と囁いた。
游月は涙に濡れた顔をくしゃりと歪めて、透麻の首にかじりついた。
撮影終了後、游月は一人楽屋でぼおっとしていた。今日の撮影が成功したと言えるのかは分からない。でも監督も助監督も上機嫌だったから、あれで良かったのかもしれない。何だか透麻にたくさん迷惑を掛けてしまったようにも思えるけれど。
「あっ……。やだ、も……」
透麻のことを考えただけで、尻の奥が熱く疼く。そう、撮影は終わったというのに、心身に灯った情欲の焔はまだくすぶっており、游月に切ない溜め息をつかせた。
もっともっと欲しい、あれでは足りない――そして、そんな自分の浅ましさに羞恥と嫌悪を抱いた。
「透麻、さぁん……」
愛しい名を呼びながら、つい股間に手が伸びてしまう。が、はたと我に返りぷるぷる頭を振った。いけないいけない、また透麻さんにいやらしい子だ、ってからかわれてしまう。游月は畳に手を付いてゆっくり立ち上がろうとした。その時、楽屋の扉が音もなく開いた。
「あ……」
入ってきたのは、シャワーを浴びた後なのか、バスローブを無造作に羽織った透麻。濡れてばさりと垂れた長髪や、水滴のしたたる精悍な胸を直視することができず、游月はそっと目線を外した。
「まだ着替えてなかったのですね。游月、どこか具合でも――」
「だ、大丈夫です。ちょっとぼおっとしてただけですから」
なおも目を逸らして答える游月を、透麻は後ろから抱き締めて、
「シャワー室で待ってたんですよ。なのに来てくれないから」
「え？ だ、だって……」
うろたえる游月の耳に、透麻の唇が重なる。
「あれじゃ足りないです、游月……」
欲望を囁くと同時に、浴衣の奥に手が滑り込んできた。そして、微妙な角度に勃ち上がった性器をゆるりと掴んだ。
「ああ、やっぱり游月も足りなかったのですね」
透麻の嬉しそうな声に応えるように、游月は脚を崩して大きく広げ、腰を揺らめかせて誘った。
「なんていやらしい子でしょう、游月は」
予想通りの揶揄を、游月は頬を赤らめつつも受け入れた。
「んっ、いやらしい子だもん」
透麻はくすりと笑って、
「では、もっといやらしい格好をしてみせてください」
游月はふわふわと頷いてさらに脚を広げた。そして露わになった蕾に自ら指を這わせて蜜を塗り付け、そのままぐりぐりとねじ込んだ。
「あっ、いい………」
「一人でする時は、いつもこんな風にしているのですか？」
透麻はねっとりと訊ねながら、游月の手に背後から回した自分の手を重ねて、蕾の入口をぬるぬると愛撫する。そして、埋め込まれた游月の指に沿わせるようにして指を挿入した。
「はぅっ………ん、んっ」
「一緒に指を動かしてみましょう。ほぅら、奥からいやらしい音が聞こえてきた。游月、どんな音ですか？」
「んぁ……ん……おと………くちゅくちゅ、って………」
「どうしますか？ このまま指でイキますか？」
「んっ、いや……透麻さんのがイイ………挿れて……」
透麻は游月の指も一緒引き抜くと、膝の裏に手を添えて持ち上げた。そしてとろとろにほぐれた柔襞に自身の先端をあてがって、ずぶずぶと落としていった。撮影が終わって閉じかけていた官能が、再びぱっと花開く。
「ひゃう！ ぅっ、ぅぁ……ああっ…ん！」
喉を反らせて甘美な喘ぎを滴らせる游月を、透麻はうっとりと眺めた。そして耳に舌を挿し込んでねっとりと犯してから、
「游月、動きますよ……」
しかし游月は首を振って、
「だ…め！ 声、出ちゃう……」
そう、ここは楽屋なのだ。扉の鍵はさっき透麻が閉めておいたが、廊下を行き交う人の声が聞こえることもある。ということはつまり、室内の声が廊下に漏れる可能性もあるのだ。
「分かりました。では」
透麻はバスローブの腰紐をほどいて二重にすると、游月に咥えさせた。そして頭の後ろで結ぶ。
「これで大丈夫。少しの間我慢してくださいね」
口調こそ優しいが、声の芯には紛れもない嗜虐の欲望が凝っていた。游月はぞくりと震えたが、それは怯えよりむしろ期待の震えだった。めちゃくちゃにされたい、食べられてしまいたいという欲望。それを汲み取ったのか、透麻は脚を抱え直し、腰をがくがくと揺らして容赦ない突き上げを始めた。
「んぅっ…ぅ、ぅ……」
拘束された口から漏れ出るのは、くぐもった呻き。眉間に皺を寄せ、生理的な涙をにじませ荒々しい陵辱に耐える游月の姿態が、透麻の目にどのような像を刻むか想像に難くない。それを裏付けるように、透麻は情欲でざらりと毛羽立った声で呟いた。
「そんな顔をされたら……ますます虐めたくなる……」
「んっ、んっ！ んぅぅ……」
「さあ、游月。あなたの奥に私の熱い精を放ちましょう。味わってくださいね」
丁寧な口調とは裏腹に、透麻は奥の敏感な膨らみをぐりぐりと乱暴にこすり上げた。游月はぐぅっと喉を鳴らし、爪先まで張り詰めた脚で二度、三度と宙を蹴りながら、ぴゅるぴゅると白い放物線を吐き出した。
そして透麻も、不規則な痙攣で締めつけてくる媚肉の奥に白濁を叩き付けた。
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