１３.

「はぁっ…ぁん……んんっ……っふ………」

純は、ほとんど水に近いシャワーを頭からかぶりながら、勃ち上がった自分のモノを上下に扱いていた。空いた手で口を塞ぎ、声が漏れるのを防ぐ。

「あぁ……あっ、あっ、ああぁっ…………はぁっ……っく」

無意識のうちに腰がびくびく揺れたかと思うと、先端から白く濁った液体が迸った。それはあっという間に流されていったが、尭村の場所を汚したという罪悪感はいつまでも残った。

悔しさや情けなさがこみ上げてきて、思わず涙がこぼれる。それを冷たいシャワーで洗い流すと、純はぶるっと頭を振って浴室を出た。

尭村が用意してくれた新しいシャツと下着をつけると、純は恐る恐る部屋に顔を出して、「あの……」と声を掛けた。

「上がったか」
「はい」
「家には電話を入れておいた。今夜はうちに泊めると言っておいたから、心配するな」

電話に出たのが環だったら厄介なことになっただろうが、運良く母親が出てくれた。尭村は精いっぱい愛想のいい声で適当なことを言い、“優しく面倒見のいい先輩”という印象を植え付けることに成功した。やればできるのだ。

「疲れただろう、もう寝ろ。俺のベッド使っていいから」
「えっ？　い、いいです。僕、その辺に転がって寝ますから」
「うだうだ言うんじゃねえ。言う通りにしろっ」
「はい……」

純は小声で「おやすみなさい」と挨拶すると、とぼとぼと寝室へ入っていった。できるなら、ここには寝たくなかった。ベッドの上にあがって、枕に顔を押し付ける。ふわっと心地よい弾力性と共に、尭村の匂いが微かにたちのぼって純の顔を包み込んだ。

―――ああ、また……どうしよう……

浴室で２回も放ったのに、またゆるゆると勃ち始めている。もちろんここで出すわけにもいかない。

純は布団もかけずに、ベッドの上で小さく丸まって、じりじりと湧き上がる欲望に耐えた。このまま薬の効き目が切れるのを待つしかない、そう覚悟を決めて。






―――寝れるわけねえよな

この状況で安眠できたら明日から仙人を名乗れるな、などと下らないモノローグで気を紛らわせながら、尭村は部屋の中をうろうろと歩いていた。

どうにも落ち着かないのは当たり前。すぐ隣の部屋で寝ている純のことを想うと、ある一点に血液が凝集してゆくのを感じる。冷たいシャワーを浴びたばかりだというのに、そこはますます熱をもって膨らんでくるばかり。

大体、あんな格好をさせたのもいけなかった。風呂上り、大きすぎるシャツを素肌に羽織ってそっと顔を覗かせた純は、眩暈がするほど色っぽかった。

下着はもちろんつけていただろうが、シャツに隠れてしまってまるで何も穿いていないように見える。すらりと伸びた白い脚。眩しいほどの……

―――って、考えるなっつってるだろうがっ

尭村は自分に虚しい突っ込みを入れて、頭をがりがりと掻いた。

その時、隣の部屋から苦しそうな呻き声が聞こえた。尭村は一瞬ためらったものの、腹の底に力を入れて寝室の扉を開けた。

「純、どうした？」

見ればベッドの上で布団もかけず、足を抱えて丸まっている。顔を苦しそうにしかめているが、何より驚いたのは、指をぎりぎりと噛んでいることだ。

「おまえっ、何やってるんだ！」

尭村は慌てて駆け寄り、指を引き剥がした。血こそ出ていないものの、痛々しい歯型がくっきり刻み込まれている。

「こっ、来ないで、尭村さん……」

純は掴まれた手を振り払って、ころりと反転し背中を向けた。

「純……そんなに俺のことが嫌いか？」

尭村はむらむらと湧き上がるどす黒い感情を、そのまま声に反映させた。このままでは、京極より酷いことをしてしまうかもしれない。

しかし、振り向いた純が発した言葉に、尭村の尖った感情は融かされていった。

「どうして？………僕を嫌っているのはあなたの方でしょう？」

純は溢れる涙を拭おうともせず、縋るような表情で続ける。

「ただでさえ嫌われているのに、こんな……浅ましい姿まで見られて、しかも、あなたの場所まで汚してしまって………っく……ううっ……ぼく、もう死んじゃいたいよぉ………」

泣きじゃくる純の隣に腰をかけ、尭村はその乱れた髪をそっと撫でた。

「純……お前、何故俺を呼んだ？　沖ではなく俺を」

純は嗚咽を呑み込むと、消え入りそうな声で答えた。

「ご…め、なさい……僕、僕、まだあなたのことが好きだから……それで、つい………」

髪を撫でていた尭村の手が、ぴたりと止まる。純は、びくつきながらも言葉を続ける。

「あなたには謝らなくちゃいけないことがたくさんあるのに、また自分の勝手な感情を押し付けてしまって………ごめんなさい。僕みたいな人間が好きでごめんなさい………」
「純……」
「僕、やっぱりここにはいられません。これ以上は……あぁ………もう……」

潤んだ瞳は涙のせいばかりではない。荒い息も、必死の告白を終えたからではない。純はもう自分の状態を隠そうとせず、半開きの唇から甘い喘ぎをこぼしながら起き上がろうとした。しかし―――

「あっ………」

尭村に押し倒されて、再びベッドに横たわる。そしてそのままシャツを脱がされ、下着までも取り払われた。

「あきむらさん……」

余りの出来事に、抵抗するのも忘れて無防備な裸体をさらす純。

「辛いんだろ？　今楽にしてやる」

言うが早いか、尭村は純の脚を広げて股間に顔を埋め、勃ち上がって先端がぬめぬめと光っている純自身を口に咥えた。

「ひっ、や、やめてぇ……だめえ………」

純は腰を振って逃れようとしたが、尭村にがっしり掴まれて身動きがとれない。

「はぁっん……あぁ……ん、い、いやあぁぁ…ん」

口ではいやと言いながら、腰はねだるように揺れている。尭村は舌を絡ませ、時には優しく甘噛みし、先端の割れ目を舌先でつついて刺激する。そうしながらも、根元を扱く手は緩めない。

こんな刺激を与えられて長くもつはずもなく、純は悲鳴にも似た嬌声をあげて尭村の口腔に放った。

「あふっ……ふぅん……んんっ」

暴力的な快感が去った後には、激しい後悔の波が押し寄せる。純はたまらず泣き出した。

「やあだぁ……どうしてこんな……うっ、ううっ、あきむらさん、ごめんなさい……」

どうしてよいか分からず、非難の言葉と謝罪の言葉、両方をこぼしながら泣きじゃくる純を、その身体を、尭村はある種の感動をもって見つめていた。

こんな綺麗な生き物は、これまで見たことがない。

白い肌には興奮のせいか薔薇色の血色が灯り、首筋に微かに透けて見える薄青い静脈と艶かしい対比を見せる。

白い蝋で身体を作り、透明なガラスの血管を通してオパール色の月光を注ぎ込んだらこんな人間が出来上がるかもしれないと、悪夢に取り憑かれた人形作りみたいなことを考えてしまう。

乳首は、男にしては大きくふっくらとしていて、あどけないサーモンピンク。これも興奮のせいかつんと勃ち上がって、早く食べてと言わんばかりにふるふると震えている。

ウエストは両手で囲めそうなほど細く、ヒップのラインは女性ほど丸みを帯びてはいないが、程よい曲線を描いていて、尭村の手にぴったり収まりそうだ。

そして、この割れ目の奥にある小さな蕾。今は見えないが、きっとピンク色に潤んで、もの欲しそうにひくひくと収縮しているのだろう―――

尭村は、心の中で両手を挙げた。降参。もう駄目だ。限界。

そして無言のまま自分の服を脱ぎ始めた。純は、きょとん、とした顔で不思議そうに見つめている。が、尭村が下着ごとズボンを脱ぎ捨てると、思わず目を見開いてソコを凝視した。

それもそのはず。尭村のモノは血管を浮き上がらせてぱんぱんに膨れ上がり、ほとんど垂直に勃ち上がっていた。

「あ……あきむらさっ………」

言い終わらぬうちに唇を塞がれ、激しく口腔を嬲られる。唇の端から唾液がこぼれ落ちるが、尭村は構わずさらに注ぎ込む。

「うっ、ふぅぅん……んっ」

舌の裏側を執拗に舐められ、純は快感に腰をひねった。が、さらにそれ以上の刺激が襲いかかる。尭村は胸の可愛らしい飾りを指でつまむと、少し強めにコリコリとこすった。

「んんっ……、っふう」」

漸く唇を離した尭村はニヤリと笑うと、身体を少しずらしてもう片方の乳首に吸い付いた。

「きゃあっ……あぁん、やあぁん」

優しく歯を立てたり、乳輪を舌でなぞったり、強く吸い上げたりと、様々な刺激を与えてくる。そのたびに純は鳴きながら腰を跳ね上げる。
すると、再び完全に勃ち上がった性器が尭村の腹にぶつかってぬるぬると滑り、また別の刺激をもたらすのだ。

「純……ずいぶん濡れてきたな。ぐしょぐしょじゃねえか」

尭村は純のモノを掴むと、親指の腹で先端の割れ目を擦った。途端に、とろとろと先走りが溢れてくる。

「くぅ……ふぅん……んんっ」

純はうっとりと目を閉じて、与えられる快感に身をゆだねる。尭村はその艶かしい表情を堪能すると、溢れた蜜を指ですくって、そのまま後ろに滑らせた。と同時に純の脚を大きく開かせて腰を持ち上げる。

そして想像以上に綺麗な肉色をした後孔の襞を広げるようになぞると、ゆっくり指をめり込ませた。

「あっ……やああぁぁっ………」

根元までどっぷりと挿し込んだ２本の指を中で動かすと、つぷ、つぷ、と控え目ながらも淫猥な音が漏れてくる。

「純……お前ん中すげえ熱い………それに、ひくひくしてる」

喋るのも辛いほど息が荒くなっている。尭村は本当の限界を悟って、勢いよく指を引き抜いた。そして猛りきった自分のモノを純の蕾にあてがう。すると、奥へ奥へと誘うかのように襞が蠢いて、尭村の先端に吸い付いた。

「……くっそぉ」

純を傷つけないようにゆっくり中を犯そうと思ったのに、とてもじゃないがそんな余裕はない。尭村は心の中で詫びながら、ずぶずぶと勢いよく突き入れた。

「きゃあああぁっ……やあぁっ、ああん……あぁっ」

熱をもって絡みついてくる粘膜を、尭村は容赦なく擦り上げる。激しく腰を打ちつけるたびにぐちゅ、ぐちゅと濡れた艶音が漏れ、赤く潤んだ襞がねっとりとめくれ上がったり押し込まれたり。

「はぁっ、ああっ、ああぁっ、あきむらさぁん……もうだめぇっ……も、イクぅ……イっちゃうよぉ……」
「いいぜ、純………いけよ」

尭村は純の細い腰を抱え直すと、がつがつと貪るように突き刺して、内部をめちゃくちゃに掻き回した。

「ひぃっ……ぃやあああ……あああぁっ」

悲鳴と共に、柘榴のように赤く割れた先端からミルク状の液体が迸り、白い胸を汚した。と同時に尭村もくぐもった声を漏らして、純の奥に自らの欲望を注ぎ込んだ。

「はあっ、はっ……あぁ………」

欲望を放った後、目尻に涙を溜めて何とか呼吸を整えようとする純は、可憐でありながら官能的。

尭村は、純の中に放った直後にもかかわらず、抜く間もなく再び怒張するのを抑えられなかった。もとより抑える気もないのだが。

「あ、あきむらさん……」

純が驚いたように見つめている。自分の中で膨れ上がる尭村自身をダイレクトに感じているのだろう。

尭村は、再び形を変えてゆくこの自己中な肉棒に、あくまで従順に絡みつくむっちりとした内壁を愛しく思った。愛しく思う余り、とことん苛めたくなった。

尭村は、戸惑う純を無視して華奢な足首を掴み、思い切り広げると、自分の赤黒いモノが突き刺さったままの秘部を真上に向けて、そのまま上から垂直に打ち込んだ。

「きゃあぁぁっ、ああっ…ん、あきむらさぁぁん……も、やあぁぁ……ん」

涙をぽろぽろこぼしていやいやと首を振り、シーツを掴む純。その姿態がどれほど男を煽るか、分かっているのかいないのか。尭村は思わず声を荒げた。

「純、見ろっ」

純は弾かれたようにびくりと震えて、自分を犯す尭村を、いや、天井を向いた己れの秘孔に深く埋め込まれた太く硬い尭村自身を、結合部分からとろとろと滴る白い涎を見つめた。

「お前の中にぶち込んでるのは誰だ？　お前を犯してるのは誰だ？　いいか、これからお前を抱いて、お前を泣かせることができるのは俺だけだ。もう、他の男の代わりでいいなんて物分りのいいことは言わねえ。お前は俺のものだ。俺だけのものだ。それをよく覚えておけ！」

ぎらぎらと凶暴な輝きを放つ双眸に見据えられ、純の顔に悦びと戦慄が広がる。が、それも一瞬のこと。再び真上から激しい注挿を繰り返す尭村に翻弄され、絶叫に近い嬌声と共に意識を完全に手放した―――

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