第十話
鷲塚が予想した通り、翌日から蒼舞の態度は変わった。良く言えば従順、悪く言えば無気力。
これまでのように鷲塚に反抗したり皮肉を言って突っかかったりすることはなく、送迎の際も助手席に黙って座って、悄然と俯いたまま。鷲塚が話しかけても最小限の返事しかしない。
片桐の亡命失敗、そして鷲塚からの“拒絶”は、もともと繊細な蒼舞に酷いダメージを与え、その影響は心神のみならず身体にも表れ始めた。たった数日で、はっきり分かるほど痩せてしまったのだ。
バレエ団内部でも蒼舞は微妙な立場に置かれており、それも蒼舞の心身を蝕んでいた。片桐の事件は団の内部で公表こそされなかったものの、すぐに団員の知るところとなった。
当然ながら、片桐と最も親しかった蒼舞に疑惑の視線が集中する。表立って非難はしないものの、遠巻きに眺めつつ眉根を寄せてこそこそ囁きを交わす、そんな光景は日常茶飯事だった。
孤独の疑念のただ中で、蒼舞はひたすらレッスンに励んだ。片桐の事件の影響で定期公演は無期限延期となり、目先の目標がなくなった団員たちの気の緩みが顕著な中、蒼舞は己のバレエの世界に没頭した。逆に言えば、そうすることでしか心の均衡を保つことができなかったのだ。
そんな蒼舞の危うい精神状態を鷲塚は敏感に察したようで、「ちゃんと食事をしているのか」「しっかり眠れているか」と時折訊ねてくる。蒼舞はそのたびに、目を合わせぬまま「大丈夫…」と力ない答えを返した。
実際は少しも大丈夫ではなく、ベッドに入ってもさまざまな黒い想念が次々と湧いて睡眠を妨害され、悪夢が懐かしくなるほどの不眠が続いていたのだが。
そして片桐の事件から一週間後。レッスンが終わってバレエ団本部から出てきた蒼舞は、鷲塚と目を合わせぬままぼそっと告げた。
「昼を食べ損ねた。腹減ったから、適当に食べて帰る。あんたは先に帰っていいよ」
「いや、そういうことなら店まで送る。食事が終わるまで待っていよう」
鷲塚の返答に、蒼舞は自嘲を浮かべ、
「僕にはその程度の自由もないってことか」
そう言ってやつれた溜め息をついた。そして肩を落とし、車が停めてある方に向かってとぼとぼと歩く。すると少し慌てたような鷲塚に呼び止められた。
「待ちなさい。食事に行かないのか」
「ん……いいや。ほんとはそんなに腹減ってないんだ。ただ、たまには一人で羽を伸ばしたかっただけだから」
鷲塚はしばし黙考したが、やがて頷いた。
「分かった。特別に許可する。その代わり、ちゃんと栄養になるものを食べるのだぞ」
蒼舞はこっくり頷いて、繁華街へ足を向けた。
テーブルに肘をつき、蒼舞は今夜何度目かの溜め息をついた。目の前に並べられた料理に集中しようとするのだが、どうしても意識は鷲塚の方へ向いてしまう。
「もう放っといてくれよ。僕のことなんか……」
必要以上に自分を頼るなと突き放しておきながら、あれこれ心配する。食事はとっているのか、眠れているのか、公安警察から何か言ってこないか──等々。そんな風に気にかけてくれるから、こちらもつい期待してしまうのだ。少しは頼ってもいいのかなと。でも、
「嫌だ、もう。拒絶されるのは……」
蒼舞は押し殺した呟きを漏らす。護衛の任務が解かれたらあんたはどうするんだと挑戦的に訊ねた蒼舞に対し、『何があってもずっと君を守ると言わせたいのか』と鷲塚は言った。その時蒼舞は、自分の本心を知ったのだ。その通りだと。ずっと守ってほしいのだと。
しかし同時に、それは不可能であることも分かっていた。鷲塚は軍人。護衛は任務。それも、エリート中のエリートである彼にとっては、不本意な任務に違いない。なのに、あんなに真面目に遂行している。
「ははっ、ほんと、クソが付くほど真面目で堅物で忠実で……」
いつも無表情で愛想のかけらもなくて、口を開けば小言ばかり。何かにつけては蒼舞を子供扱いして、呆れたように肩をすくめる──鷲塚への不満を並べ立てることで溜飲を下げようとしたのだが、そんな蒼舞の意図に反して胸の奥は切なく軋むばかりだった。
再びはあと溜め息をつき、皿の上に盛られた鶏肉をフォークでつついていると、二人の見知らぬ男が蒼舞のテーブルに肘をつき、馴れ馴れしい口調で話しかけてきた。
「なあ、一人で食っててもつまんねえだろ？ 俺たちと一緒にどうだ？」
二人とも人懐こい笑みを浮かべてはいるが、目だけは熱にうかされたようにぎらぎら輝いている。これがどんな欲望に由来する輝きなのか、蒼舞は嫌というほど知っていた。自分を手酷く犯そうとする時の近衛が、こんな獰猛且つ淫蕩な目付きをしていた。
「いや、遠慮する。この後まだ仕事があるんでね。ゆっくりしていられないんだ」
蒼舞は彼らの思惑には全く気づいていないふりをして、皿の上のものを素早く口に運んだ。しかし男たちは意に介さず、筋肉で盛り上がった二の腕や胸板を見せ付けるようにしてテーブルに身を乗り出し、
「あんた、ガイジンか？ それにしちゃ日本語上手いな」
蒼舞は無視して食事を終え、テーブルに代金を置いて席を立とうとした。すると二人は示し合わせたように蒼舞の腕を掴み、
「食事終わったなら飲みに行こうぜ。いい店知ってるんだ」
「断る。仕事があると言ってるだろう」
答えながら蒼舞は店内をそっと見回した。客も店員も、見て見ぬふりを決め込むか、面白がって成り行きを眺めている。
バレエ団の団員と顔を合わせたくなかったから、彼らが寄りつかなそうな店を選んだのがまずかったのかもしれない。来ている客も店の雰囲気も荒んで、お世辞にも品がいいとは言えなかった。
でも逆に、こういう店なら多少暴れても大丈夫ということだろう。蒼舞は「仕方ないな」と言って従うそぶりを見せ、二人の気が緩んだところで急所に電光石火の膝蹴りを食らわせた。
「………！！」
声も出せず股間を押さえて悶絶する男たちに冷ややかな一瞥をくれ、蒼舞はその場を立ち去った。そして素早く階段を上がり、地下の店から地上に出てほっと息をついた。しかし、
「待てッ、この毛唐野郎！！」
どかどかと階段を上がる荒々しい足音が、狭い路地裏に響き渡る。蒼舞は身を翻して逃げようとしたが、慣れない場所のためどちらへ行くべきか迷った。この辺りは袋小路が多く、下手をしたら追い詰められてしまう。その時、
「こっちだ。早く！」
路地の奥から聞こえた声に従い、蒼舞は走り出した。一瞬、鷲塚が助けにきてくれたのかも、と思ってしまった自分が哀しい。もちろん声の主は鷲塚ではない。
「ここまで来れば取り敢えず大丈夫だろう」
男はそう言って、蒼舞を安心させるようににっこり笑った。年は蒼舞より五つか六つ上だろう。背も高く端整な顔立ちをしているが、目の周りを縁取る青黒い隈や荒れた肌が不健康な生活を露呈していて、蒼舞は生理的な嫌悪感を抱いた。
とはいえ、助けてくれた人にそんな感情を見せられるはずもなく、蒼舞は「ありがとうございました」と礼を言って儀礼的な笑みを返した。男はいやいや、と手を振り、
「君みたいな綺麗な人が一人でいたら危ない。男だろうが女だろうが美しいものを嬲るのが好きだと公言して憚らない、とんでもない輩もいるから。さっきの連中みたいに」
蒼舞は「怖いですね」と当たり障りのない言葉を返し、
「あの、表通りに出るにはどこを行けばいいでしょうか」
男の後をついて走ったため自分が今どこにいるかよく分からなかったのだが、大通りに出ればタクシーも拾えるだろう。しかし、
「いや、まだ奴らが君のことを捜しているかもしれない。すぐ動くのは危険だ」
「ああ、確かにそうですね。でも……」
「どこかこの辺の店に入って、少し時間を潰したらどうかな」
「…………」
蒼舞は思った。もしかしたらこの男、遠回しに謝礼を求めているのかもしれない。相手に気づかれないように小さな溜め息をつき、
「そうですね。ご忠告に従いましょう。もしよろしければご一緒にいかがですか？ 助けてもらったお礼もしたいので、僕に奢らせてください」
案の定、男は相好を崩し、
「いやあ、悪いな。そんなつもりで言ったんじゃなかったんだけど。それじゃまあ、お言葉に甘えて」
そして、いい店を知っているので、と言って歩き出した。蒼舞は仕方なく、その後についていった。
男は清水と名乗った。蒼舞もそれに合わせ、名字だけ名乗った。助かったのは、清水が詮索好きな男ではなかったことだ。蒼舞の職業や出自については何も訊ねず、ごく一般的な世間話に終始した。
誰だって蒼舞を見れば、ガイジンなのかハーフなのか、親はどこの国の人なのかと好奇心が疼くはずだ。なのに清水はそういったプライベートなことは一切訊こうとしない。
不健康そうな見かけによらず、案外良識ある人間なのかもしれない。蒼舞は、外見だけで生理的な嫌悪感を持ってしまったことを申し訳なく思った。
清水が案内してくれた店は、まあまあ居心地がよかった。何より空いていて静かなのがいい。そこで蒼舞は、店のお勧めだというラベンダー色のカクテルを飲んだ。
外国のハーブがブレンドされているというそのカクテルは、確かにこれまで味わったことのない風味を持っていた。アルコールが高めなのか、飲み進めるうちに身体がふわふわして、視界も怪しく霞んできた。
「妃月さん、大丈夫ですか？」
「え？ あ、ああ……はい……」
「ちょっとアルコールがきつかったかな。あちらで休みましょう」
「はい……」
たった一杯のカクテルでここまで酔ってしまった自分に不審を覚えつつ、蒼舞は清水に促されるまま席を立った。そして長い廊下をよろよろと歩き、気がつくと狭い個室の中で粗末な寝台に横になっていた。
あれ、なんでこんな所にいるんだろう。確か店で誰かと飲んでて……そうだ、確かシミズとかいう男と一緒に──
「な…にする、んだ……」
いきなり左右から伸びてきた手にシャツを脱がされそうになり、蒼舞は起き上がって抵抗しようとした。しかし手も足も思い通りに動かず、何もできぬままあっさり脱がされた。
「おまえ…ら……」
蒼舞の服を脱がしているのは、前の店で声を掛けてきた二人だった。その後ろで、清水がえらそうに腕組みしつつ見下ろしている。それでようやく、この連中が仲間だったことに気づいた。蒼舞をここに連れてくるため、最初から仕組まれていたのだ。
「やっぱり肌が白くてきれいだな。日本人とは比べものにならねえ」
「見かけは細いのに、けっこう筋肉が付いてるな」
男たちは熱っぽい声で囁きながら、蒼舞の服を剥いでゆく。露わになった肌に、男たちの吐いた息がかかる。それは生臭く湿って、肌がべたつくような錯覚を喚起した。
「こんな上玉、そうそうお目にかかれるもんじゃない。この幸運を神に感謝したいくらいだ」
清水は浮かれた声でそう言いながら、カメラのようなものをいじり始めた。蒼舞の視線に気づいたのか、にたりと笑い、
「君みたいなガイジンが陵辱されるポルノヴィデオは高く売れるんだよ。愛好家が多くてね。これまで散々わが国を痛めつけ、極東の黄色人種と小馬鹿にしてきた西洋人への意趣返しという側面もあるだろう。情けない話だがね。西洋に対し、妄想の中でしか優位に立てないというわけだ」
清水は淡々と解説しつつ、カメラを構えた。
「日本国は欧米諸国に匹敵する経済力と軍事力を手に入れた？ 冗談じゃない。そんな近衛の戯言を信じてるヤツなんざいない。我々はいつまでたっても東洋の黄色い猿だ。そう、逆立ちしたって君のその白い肌や宝石のような瞳を手に入れられないようにね」
清水の言葉を聞きながら、蒼舞はなぜ近衛が執拗に自分を辱めるのか分かったような気がした。近衛はおそらく、蒼舞を犯すことでこれまで日本を蔑んできた西欧世界そのものに仕返しをしているのだ。
「は……は、なるほど……」
蒼舞は、全身から力が抜けるのを感じた。さっきまではどうやってこの窮地から脱しようか必死に頭を巡らせていたのだが、どうでもよくなってしまった。
好きなようにすればいい。どうせ、散々近衛に弄ばれ穢された身体。その相手が変わっただけのことだ。ただ、
──明日のレッスンに支障が出ないようにしないと。
胸の奥で誓いを立て、静かに目を閉じた。その時、突然部屋の扉が開いて、さっき店で接客していた店主が青ざめた顔で現れた。よく見れば、歯の根が合っていない。清水は険しく眉根を寄せ、この無粋な闖入者を睨みつけた。
しかし、その尖った視線は呆気なくはね返された。店主の後ろから姿を現した、黒服の男によって。
「な…なんだよお前は……ああ？」
清水は素性の卑しさが分かる下品な恫喝を叩きつけた。こんなところに本物の黒服が、総統の狗が現れるはずないという考えからだろう。
それでもどこか及び腰で額が青ざめているのは、黒服に対する本能的な怯えがあるからに違いない。たとえそれが、ただの黒いスーツを着た男であっても、無意識の領域が勝手に反応してしまうのだ。
他の二人も、清水と同様の反応を示した。本能的な怯えを見せつつも威嚇する。すると、その間に挟まれた店主が歯をがちがち鳴らしながら必死に訴えた。
「や、やめろっ……こっ、このお方はほん、ほんものの──」
「君たちが辱めようとした者の護衛を任じられている。朱衛軍内務公安局の鷲塚だ」
鷲塚はそう言って羽織っていたロングコートを脱ぎ、寝台の上で素肌をさらす蒼舞の上にふわりと投げかけた。
コートの下から現れたのは、左腕の赤い腕章。色彩の乏しい粗末な部屋に、毒々しくも禍々しい色彩をともした。
「ひぃッ」
清水はかすれた悲鳴とともに蛙のように後ろに跳んで背後の壁にぶつかり、そのままどすんと尻餅をついて失禁した。残る二人は見事に凍りついて、瞬きもしない。
そんな彼らには一切構わず、鷲塚は寝台に近づいた。そして蒼舞の服を拾い、その身体をコートにくるんで抱き上げた。
「この店の裏商売と君たちの素性についてはすでに調べがついている。逃げようなどと思わない方が身のためだ。では」
妖しい光沢を帯びたバリトンボイスで最後通牒にも等しい言葉を告げると、鷲塚は悠然と部屋を後にした。
「……なんで、僕の居場所が分かったんだ」
鷲塚の車、座り慣れた助手席で黒いコートの襟をきゅっと引き寄せ身体を隠し、真っ直ぐ前を向いたまま蒼舞は訊ねた。鷲塚はわずかな間をおいて、
「勘だ、と言っても君は納得しないだろうな」
「女の勘は怖いけど、男の勘なんて大したことない」
「同感だ。君の鞄には発信機が付けてある」
鷲塚がさらりと打ち明けると、蒼舞はくくっと笑って、
「なぁんだ、つまらない。鷲塚さんの特殊能力で捜し当てたのかと思ったのに」
「怒らないのか？」
蒼舞は大きく瞬きしてから、身体ごと鷲塚の方を向いて、
「今さら。僕が監視対象なのは分かってるし。それに、お陰で助けてもらえたんだから」
「助けてもらえた、か。そう言う割には、寝台の上で抵抗するそぶりも見せず大人しくしていたな。怖くて抵抗どころではなかったのか」
「まさか。抵抗するのもバカらしいと思ったから。好きなようにすればいいってね」
鷲塚の眉間に縦皺が刻まれた。普通の人間なら大した変化でもないが、鷲塚には珍しいあからさまな感情の露出だった。
「君は、あの男たちが何を目論んでいたのか分かっているのか」
「もちろん。僕を強姦して、それを撮影したヴィデオを売ろうとしていたんだ」
そんなの大したことじゃないと言外に匂わせつつ答えると、車が急停止した。赤信号だったから止まったのだが、鷲塚にしては荒っぽい運転だった。
「君の身体は男たちの薄汚い欲望を満足させるためではなく、舞台の上で観客に感動を与えるためにあるのではなかったのか」
頬がひりひり灼ける。鷲塚の怒りと苛立ちが、熱線となって伝わってくる。しかし蒼舞はそれを平然と受け止め、
「彼らが言っていた。僕みたいなガイジンが陵辱されるヴィデオは高く売れるってね。その根底にあるのは、これまで日本や日本人をバカにしてきた西洋人に対するルサンチマン、怨恨だ」
鷲塚は黙したまま車を発進させたが、いつも真っ直ぐ前を向いている不動の瞳が揺らいでいることから、彼が少なからず動揺していることが窺えた。
「それを聞いて僕は考えた。近衛閣下も同じじゃないかと。あんたは否定するだろうけど、あの人が僕を性奴隷のように扱うのは、そうすることで日本を蔑んできた西欧世界に復讐しているんだ。そう思ったらなんか、どうでもよくなってきた。近衛に犯されるのとこいつらに犯されるのに違いなんてありゃしない。いかがわしいヴィデオが裏で流通したって、僕が近衛といかがわしい関係にあることは公然の秘密なんだから。籠の中の鳥に、プライドなんてはなからないんだ」
「プライドを捨てた人間ほど醜いものはない」
「えらそうなこと言うな。総統に尻尾振ってる狗のくせに」
蒼舞はぴしゃりと言い返した。自分がとんでもない発言をしていることは承知していたが、後悔はなかった。ややあって、鷲塚はやつれた溜め息をつき、
「そうだ。私はプライドを捨てた醜い人間だ。だからこそ君にはそうなってほしくない。誰よりも気高く美しくあってほしい」
鷲塚の思いもかけぬ言葉に、蒼舞は毒気を抜かれた。
「なに言ってんだよ、あんた……」
「むろん、それは私の勝手な願望に過ぎん。しかし私は、舞台の上で光り輝く君が見たい。舞踊の神ディオニュソスのように、あらゆる思想も政治も主義も陰謀も超越した高みで踊る君が見たい」
鷲塚の言葉は、すなわち情熱だった。それは蒼舞の身体に浸透し、内側からゆっくりと高ぶらせてゆく。しかし、それに酔えるほど蒼舞は楽観的になることはできなかった。
「……なら、僕を自由にしてくれ。鳥籠から解き放ってくれ」
答えは、もちろん分かっていた。
「それは……できん」
蒼舞は剣呑な笑みを浮かべ、言葉の刃を突き刺した。
「総統の狗」
その瞬間、鷲塚の顔が痛みをこらえるように歪んだ。
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