DECISION
４.
ちゃぷん、というささやかな水音が鼓膜に心地よく響く。浅く湯の張られた石造りの浴槽に身体を沈めた遼牙は、かいがいしく奉仕する瑠羽の方を向いて、
「瑠羽、もういいからこちらへ来なさい。一緒に浸かろう」
腕を差し伸べて膝の上に呼んだ。瑠羽は湯にのぼせて薔薇色に潤んだ頬をさらに赤らめて、言われた通り膝の上にちょこんと座る。
「もっと傍へ。さあ」
遼牙の求めに応じて身体をすり寄せ、胸と胸をぴったり付けて薄い湯着越しに触れ合う肌の感触にうっとりと微睡んだ。
が、何かを思い付いたのかぱちりと目を開けて、遼牙の逞しい胸にじっと視線を注ぐ。と思ったら、頬をぺたぺたくっ付けてむむ…と眉根を寄せたり、指先でつんつんつついたり。
その真剣な様子が可愛くて遼牙は暫く好きにさせていたが、やがてぽんぽんと頭を撫でて、
「こら、瑠羽。くすぐったいぞ」
「は、はい。遼牙さま、あの……」
今度は小さな手のひらでさすって首をひねる。遼牙は笑いを噛み殺して、
「さっきの剣か？ どこにしまってあるのか不思議なんだろう」
瑠羽はこくんと頷いて、遼牙の顔を見上げて答えを待った。が、遼牙はいたずらっぽい笑みを浮かべて見下ろし、「さぁて、どこにあるのかな」と囁くばかり。
からかわれていると思った瑠羽はぷく、と膨れて、遼牙の身体じゅうをぺたぺた触って捜し始めた。
肩から二の腕、胸、背中、腹―――もちろん瑠羽は真剣に捜していたが、遼牙にとっては柔らかな手のひらによる愛撫以外の何ものでもない。
「あ、遼牙さまぁ………」
腹の下方へ視線を落とした瑠羽は、ぴたりと探索の手を止めた。遼牙の一物が、隆々と勃ち上がって揺れているのを見付けたからだ。
「ん？ どうした？ そんなところに剣はしまっていないぞ」
遼牙の笑いを含んだ指摘に楚々と頷き、両手でふわりと握り込む。そして顔を近付け、ふっくら突き出した唇で先端にちゅっと吸い付いた。
たったこれだけのささやかな刺激なのに、遼牙は耐えられないとばかりに低く呻いて下腹部の筋肉を波打たせた。
ゆっくりと顔を上げた瑠羽の唇は遼牙の先走りに濡れて、もぎたての果実のようなみずみずしさを見せてぷるんとふるえている。有無を言わせずかじり付きたい欲求を何とか抑えて、遼牙は努めて冷静な声を装った。
「どうしたのだ？ そんな物欲しそうな顔をして」
「あの……あの……ぼくぅ…………」
恥ずかしそうに俯いてもじもじする瑠羽の頬をさらりと撫で、
「瑠羽は、これが欲しくなったのかな？」
俯いたまま、小さく頷く瑠羽。遼牙は、抑え切れぬ嬉しさがにじみ出る浮ついた声で「しょうのない奴だ」と呟き、瑠羽の身体を浴槽の一段高くなっている部分へ持ち上げた。そしてそこで四つん這いになるよう命令する。
瑠羽は恥ずかしさを押し殺して、言われた通り遼牙にお尻を向けて四つん這いになった。極薄で半透明の湯着が濡れてぴったりお尻に付着しているせいで、谷間が淡くぼかされている。
しかし捲り上げることなくそのまま湯着ごと双丘を掴み、左右に割り開いてみせた。すると、半透明のヴェールの向こうに桜色の潤みがぼんやりと見えた。
はっきり見えない分余計に妄想を掻き立てられるのか、遼牙はすっかりこの景色に引き込まれてしまい、吸い寄せられるように顔を近付けて舌先を這わせた。
「ゃッ……ぁぁん………りょ…きさまぁ…………」
布越しに舐められる未知の感触は、甘さとむず痒さの混在した微電流となって皮膚の上を滑ってゆく。瑠羽は下肢をぶるぶると震わせては、甘えた声で遼牙の名を呼び続けた。
その声が鼓膜にもたらす快感に酔いながら、遼牙は執拗に舌を這わせ、時に強く吸い付いては布越しの愛撫を与えた。
やがて唇を離し指先でグリグリこすると、瑠羽の秘部はとろりと蕩け、興奮と快感で腫れ上がった花びらが布に張り付いてひくひく蠢くのがよく見えた。
遼牙は目を細めてそのさまを賞翫し、やがてゆっくりと、自分を焦らすように布をゆるゆると捲り上げた。すると、既に紅く熟して陵辱を待つ淫らな肉が、誘うようにクチュ、と鳴いた。
遼牙は直に舌を這わせて唾液と快楽の予兆をたっぷり塗り付け、指を二本まとめて埋め込んだ。瑠羽は「くふぅん」と艶めかしく喘いで、意識せぬまま指をきゅぅっと締め付けた。
「ぅっ……」
灼けるような熱さと包み込むような柔らかさを保ったまま収縮する蜜壷に、遼牙の雄は敏感な反応を示した。ビクビクと揺れながら、先端から先走りの濃い汁を垂れ流す。
極限の飢えを恥ずかしげもなく晒す自身に半ば呆れつつ、埋め込んだままの指を奥で激しく屈伸させた。
「ふぁっ……ぁ、やん、やんッ…………」
瑠羽がくいっくいっとお尻を上下させると、クチャクチャ音をたてつつ後孔の入口がより大きく開かれた。そろそろ頃合だと見た遼牙は指を抜き、瑠羽の身体を再び膝の上に戻して湯着を脱がせた。
こちらに背中を向けたまま脚を開いてまたぐように座らせると、「自分でお尻を広げてごらん」と、優しい口調ながらも瑠羽の羞恥を煽るような命令をする。
「は、はい………」
瑠羽は消え入りそうな声で返事をすると、そろそろと背中に手を回して艶やかな尻たぶをふに、と掴んだ。そして左右に割り開く。
遼牙の「それでは入らんぞ」という指摘に応えてさらに大きく広げると、ピンク色の膜がびらりと捲れ返って濡れた光沢を見せ付けた。
遼牙は、突然淫らに開花した瑠羽の秘部に心奪われ、眩暈を覚えつつも自身を無造作に掴んだ。そして膨れ上がった先端で、潤んだ膜をぬるぬると強めにこすり上げた。
「きゃふっ………ふ、ふぁぁ…ん………ぁ、ぁぁ………」
敏感な粘膜への刺激は奥部の疼きを誘発し、瑠羽は涙をにじませて切なく悶えた。しかし遼牙のために蕾を広げ続ける手を離すことはせず、そのままの姿勢で耐える。
遼牙は目を細めて「いい子だ」と囁くと、先端を花芯に宛がったまま瑠羽の腰をゆっくり落とした。ピンク色の花びらは震えつつも大きく開き、赤黒い遼牙の先端を呑み込んでゆく。
「ひぁっ………ぁぁ、ぁン……………」
尋常じゃない太さと熱さを持つ異物に尻を裂かれる感覚に、瑠羽は大いなる戦慄と小さな快感を覚えて身悶えした。
もちろん、あっという間に快感に埋め尽くされることは経験として知っている。それでもまだ、挿入時の慄えから逃れることはできなかった。
「はッ………すごい…な…………」
まだほんの少ししか含ませていないのに、その部分から伝わる瑠羽の熱さ、柔らかさ、蠢きの全てが快楽へと変じて下肢を駆け巡る。
遼牙は暴発しないよう鳩尾に力を入れて大きく息を吐き、瑠羽の腰をさらに落としていった。最も太い部分を収めると、あとは重力の助けを借りてズブズブと埋め込んでゆく。
「キャアアアーーーーッ、ァ、ァァッ……ィャァァ…………」
瑠羽は喉を反らして嬌声を上げ、貫かれた反動かびくんびくんと二度跳ねた。対して遼牙は、竿全体を包み込んで締め付ける瑠羽の甘い媚肉に恍惚と酔い惑う。
「さあ、いい子だ。私の胸に背中を預けてごらん。そして脚を開いて……そう………」
耳許で遼牙に誘導され、瑠羽は小さく震えつつも言われた通りにした。背中を倒して、膝を大きく開く。
するとお腹にぴったり密着して勃ち上がった薔薇色のペニスが、恥ずかしそうにぷるぷると揺れた。遼牙はそれを指先でちょんちょんとつついて、
「おやおや。瑠羽はいつの間にこんな大きくしてたのかな。いやらしい子だ」
自分のことはさて措いて、からかいを含んだ声で詰る。瑠羽は「ふぇっ、ふぇっ」としゃくり上げ、「だって遼牙さまが―――」と弁解しようとした。
が、遼牙はそれに先んじて瑠羽のモノを手のひらで包み込み、くにゅくにゅ手を動かして刺激を与えた。瑠羽は「ぃゃぁぁ……」とか弱い悲鳴を上げ、遼牙の手を上からぺちぺち叩く。
「どうした？ 気持ちいいだろう？」
「やッ、やだもん………遼牙さまのっ、遼牙さまのでイクのぉ…………」
遼牙は喉の奥で笑い、腰を揺すって「これがいいのか？」とねっとり質す。何度も頷く瑠羽の耳許に口付けを落として了承を伝えると、膝に手を掛けて下から抱え上げた。
そしてまずは軽く揺さぶりながら、自身の腰をグン、と突き上げる。瑠羽は「あぁん」と艶めかしく鳴いて、ぴんと伸びた爪先で宙を蹴った。
さらに二度、三度と突き上げを繰り返すたびに、ぴちぴちに反り返った瑠羽の先端からとろける蜜がとぷとぷと溢れる。遼牙は吸い上げて飲み干したい衝動を何とか嚥下して、注挿に没頭した。
やがて意識する間もなく腰の動きは激しさを増し、結合部が漏らす粘膜の喘ぎはより濃厚に、より淫猥に。ぬちゃぬちゃ音をたてて押し込まれたり引きずり出されたりするうちに、瑠羽の花びらは濡紅に色付いてむっちり腫れ上がっていった。
その頃には既に、二人共に限界が近く、瑠羽は朦朧とした眼差しを宙に彷徨わせて四肢を巡る快楽の電流に自我を委ねていた。そして遼牙も、獣めいた荒い息を吐いて瑠羽の身体を貪ることだけに没頭する。
が、やがて「行くぞ」と低く宣告すると、角度を変えて最奥部の膨らみをグリッと抉った。瑠羽は悲鳴を上げて宙を蹴り、「出ちゃうのぅ…」と泣きながら白い精をびゅくびゅく吹き上げた。
「ぅぁっ………」
まるで咀嚼するかのように激しく蠕動する瑠羽の柔肉に、遼牙もまたあっという間に陥落した。瑠羽の奥で弾けた陰物は、どくどくと音が聞こえそうなほどの勢いで精液を放出し、蜜壷全体に種を行き渡らせた。
遼牙は尚も腰を小刻みに揺らしつつ、最後の一滴まで搾り出す。ようやく人心地ついたのか、深い満足をにじませて息を吐き、瑠羽の身体をゆっくり持ち上げて自身を抜いた。
「ふぁ…ン………」
愛しい人との繋がりが失われる感触に、思わず切ない声を上げてしまう。そんな瑠羽の想いが嬉しくて、どろどろと流れ出る精液を拭ってやる間もなく、その華奢な身体をきつく抱き締めた。
「りょうきさまぁ………」
ふわふわとした拙い口調ながらも、幸せそうに遼牙の名を呼んで胸に顔をうずめる。愛しくて愛しくて叫び出しそうになってしまうのは、まさにこういう瞬間だった。
優しく名前を呼んでやりたいのだが、今声を出したらみっともなく震えているに違いない。王たる威厳などはもはやどうでもいいのだが、そんな情けない声を出したらきっと瑠羽が心配するだろうから、遼牙は黙ってただ瑠羽の背中を撫で続けた。
そのままどの位の時間が経過しただろう、瑠羽がゆるゆると顔を上げ、
「あの……遼牙さまぁ、結局剣はどこにしまってあるのですか？」
くるんと目を見開いて訊ねてくる瑠羽に、遼牙は「ああ」と破顔して、
「私にも分からないのだ。この身体のどこかにあることは確かなのだが、普段は感じることができない。恐らく、私の血肉と一体化しているのだろう」
瑠羽は少し蒼褪めて、こわごわ訊ねる。
「でも……身体の中に剣があるなんて……。痛くないのですか？」
遼牙は「そうだな」と少し考え、
「召喚時に、多少の痛みはある。もともとあの剣、＜龍舌刀＞は呪われた凶剣なのだ。所有者にその強大な破壊能力を与える代償として、所有者の血を要求する。戦闘時以外でも身中に収め、微量ながら我が血を与えねばならないのだ」
ついさっきまで薔薇色に火照っていた瑠羽の頬から、あっという間に血色が引いた。口をへの字に歪めて、今にも泣き出しそうな表情ですがり付き、
「そんな……そんな恐い剣………。いやですぅ………」
「あ、いや……大丈夫だよ、瑠羽。心配は要らんから―――」
「やだ……やだぁ………ぇ、ぇぇっ…………」
遼牙はおろおろしつつ、瑠羽の身体をあやすように揺らす。そして困惑しきった声で、
「す、すまなかった。恐い話をしてしまったな。うむ、お前にこんな武器の話など………」
「りょ…きさま……痛いの嫌ぁ………ぼく、ぼくも痛いですぅ………」
瑠羽ははらはら涙をこぼしながら、その小さな身体で遼牙の全てを包み込むように抱き締めた。遼牙はふわりと抱き返し、
「こうして私の痛みに共感し、泣いてくれるお前がいる。そのことでどれだけ私が救われているか……。ありがとう、瑠羽。私は本当に幸せだ」
「りょうきさま……幸せ？」
濡れた瞳を向けて真剣に問い掛ける瑠羽に、遼牙は笑顔で頷きを返す。瑠羽はぱたぱたと大きく瞬きをして涙の残滓を払い、嬉しそうに微笑んで再びぎゅぅうと抱き締めた。遼牙はその頭をふわふわ撫でて、
「さあ、瑠羽。身体を流して閨でゆっくり寛ごう。今宵は色々なことがあったから、身体と心を十分に休めるんだ。分かったね？」
「は、はい……」
笑顔から一転、不安げに額を曇らせる瑠羽。遼牙はその身体に湯を掛けてやりながら、
「大丈夫だよ、瑠羽。もし恐い夢を見てしまったら、遠慮せず私を起こしなさい。全て追い払ってあげよう」
「はいっ」
今度は元気いっぱい頷いて、遼牙の優しい指が肌の上を滑る感触にうっとりと酔い痴れたのだった。
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