花色陰話
まるで、開花の熱を内に秘めた桜の蕾が徐々に綻んでゆくかのように、彼の想い人も美しく艶やかにその魅力を咲かせていった。
もし自分の恋人であったのなら、それは喜ばしくも感動的な変化であろう。しかしその人は自分のものではない。他人の恋人だった。
他の男によって変えられてゆくさまを見るのは、それがどんなに輝かしい変化であっても苦しく憂鬱なものだ。
シャツの襟元から時折覗く素肌の滑らかさ、恋人を見上げる瞳に宿る不穏なまでの情熱、、媚びを含んだ眼差し―――そう、彼はもう、男に貫かれる悦びを知っているのだ。有栖川の想い人である、美園優里は。
優里とその恋人である沢村隆矢が初めて結ばれたのがいつなのか、大体の推測はできる。恐らく、優里が部屋の合鍵を渡した時だろう。
そして逡巡していた優里の背中を押して鍵を渡すよう励ましたのは、他ならぬ自分なのだ。あれ以来、隆矢と優里の仲は急速に深まり、それまで付きまとっていたおままごとのような非現実感の代わりに、穏やかで深い愛情にしっかり裏打ちされた絆が二人を結びつけていた。
以前のように仕事中にべたべたくっ付いているようなこともなく、無言のうちにお互い助け合い、疲労が溜まっていないか労わり合いながら、酒屋と花屋を見事に両立させていた。
自分の人の良さ、間抜けた道化ぶりに腹が立つ。いくら優里の涙に絆されたからといって、何故ここまで自分を犠牲にせねばならぬのか。欲しいものは欲しいと、何故手を伸ばしてはならぬのか―――
大人で優しい有栖川さん―――それは自分のほんの一面にしか過ぎないことを、優里は知らない。そこにこそ付け入る隙はある。
「お遊びはここまでだな」と有栖川は呟いて、ついと唇の端を吊り上げた。
「ごちそうさまでした。とぉっても美味しかったですぅ」
まだワインの余韻を引きずっているのか、優里はふわふわした口調で隣の有栖川に語りかける。有栖川はハンドルを握ったまま柔らかく笑い、
「喜んでいただけて良かったです。お誘いした甲斐があった」
優里も微笑みを返して、「誘われてよかったぁ」と悪戯っぽく答える。
「隆矢君は確か、先輩の卒業式ですね」
「はい。式のあと、カラオケ店を借り切って先輩たちと一晩中騒ぐそうです。明日はお店もお休みだし。ふふっ、めんどくせー、なんて言ってたけど、本当はけっこう楽しみにしてたみたい」
「実家の仕事に掛かりきりでしたからね。たまには学生らしく羽目を外すのもいいでしょう」
優里はこくんと頷いて、こしこしと目をこすった。
「おや？ お腹いっぱいになったら眠くなってきたのかな？」
優里はぽっと頬を染めて、「子供みたいですね」と呟く。有栖川はくくっと笑って、
「寝てもいいですよ。着いたらちゃんと起こして差し上げますので」
優里は素直に頷いて、目を閉じた。その唇から柔らかな寝息がこぼれ始めるのに、大した時間は掛からなかった。
有栖川はゆっくりとハンドルを切ると、高速の入口に滑り込んでいった。
「―――優里さん、優里さん………着きましたよ」
有栖川の呼びかけに覚醒を促され、優里はゆるゆると目を開けた。
「よく眠っていましたね。あっという間だったでしょう？」
「はい………ん、んん…………」
優里は目をこすりながらシートベルトを外す。頭はまだ半睡状態なのか、全ての動作が危なっかしい。有栖川は素早く車を降りて優里の方に回り、ドアを開けた。
「さあ、どうぞ。お姫さま」
言葉を裏切らぬ恭しい仕草で差し伸べられた手に、優里はためらいつつも掴まる。そして車を降りた。
「うわ……さむ………」
夜になって急に冷え込んできたのか、レストランを出た時よりも確実に気温が下がっていた。薄手のスプリングコートしか着ていない優里は、ぶるっと震えて襟を合わせた。
ざわざわと木立の鳴る音がやけに耳に響くなあと、顔を上げてぐるりと辺りを見回す。しかし、見渡す限り背の高い針葉樹ばかり。
優里は不安になって、有栖川に向き直り、
「あの……ここはどこでしょうか」
有栖川は優里の肩を抱いて建物に向かいつつ、
「蓼科ですよ」
「蓼科って……あの、長野の………」
「そう。信州は蓼科。そしてこれは僕の別宅です。寒いでしょう？ さあ、どうぞ」
いつもと変わらぬ優しい誘いにつられて、戸惑いつつも階段を上って玄関へ。高床式の建物は暗がりで見ても相当に立派な造りで、一枚板の玄関扉には重厚な威厳すら感じられた。
こちら向きに揃えられたスリッパに足を通し、おそるおそる中へ。温かみのある木材の香りが鼻を掠めたが、寛ぐことはできなかった。
肩に置かれた有栖川の手は、何気ない風を装いつつも強張っていた。これを決して逃すものかという不動の意志が漲っているように思えて、優里は思わず足を止め、
「あ、あの……僕帰ります。帰らなくちゃ」
「なぜ？」
「だ、だって……こんな遅く……しかも長野県………」
有栖川は愉しそうに目を細めて優里の顔を覗き込み、
「今から、どうやって帰るおつもりですか？」
その時優里は初めて、輪郭の明瞭な恐怖を覚えた。ここにいてはいけない。早くここから逃げなくては。しかし、身体が動かない。
「寒いですか？ 震えていますよ」
微笑みの形は崩さず、しかし確実に優里を追い詰める。優里は無意識のうちに、祈りを捧げるように胸の前で手を組む。
「有栖川さん……どうして僕を…ここへ………？」
有栖川はくす、と笑って祈りの形に組まれた手に口付けを落とし、
「あなたを……僕のものにするためだと言ったら……？」
優里はこくんと喉を鳴らして力なく首を振り、
「う…そです……あなたは……あなたはそんな―――」
「そんなことをするような人ではない、と？」
笑いながら問う有栖川の目とまともに向き合った優里は、魂が冷えてゆくのを感じた。
そのまま奈落へ繋がっているのではと錯覚しそうなほど、底知れない目。自分がいつもこの人に感じていた優しさなど、影すら見当たらない。
優里の奥歯がカチカチと鳴り始めた。有栖川は、そんな優里の怯えを愉しむかのようにゆったりと一歩、また一歩と追い詰める。端整な唇を微かに歪めて、
「あなたはそんな卑怯なことをするような人ではない。いつも優しくて、穏やかで、大人の余裕があって、苦しい時には手を差し伸べてくれて―――」
ぞっとするほど平坦な口調で畳みかけながら、優里を壁際に追い詰めた。
「―――遠くから見守ってくれる、人畜無害で優しいだけの、去勢された雄………ククッ、そんな都合のいい男が―――」
壁に背を当てて震える優里の両脇に、ダンッ、と荒々しい音をたてて手を付き、
「―――本当にいると思っていたのですかっ？」
「あ……あ……あぁ…………」
壁に背中を押し付けたまま、ずるずると座り込む優里。有栖川の毒を帯びた厳しい問いから逃れるように、両手で頭を抱え込んですすり泣く。
その痛ましい様子を冷たく見下ろした有栖川は、床に跪いてふわりと抱き締め、
「さあ、立ち上がって。お風呂で冷えた身体を温めましょう。全てはそれからです……」
優しさと同量の冷ややかさを宿した声で、そっと囁いた。
「あっ………や…ん………だ、め…………」
つんと鼻孔を刺激する木の香りが充満する浴室。皓月がもたらす月明かりが二人の濡れた肌を照らし、艶めかしい陰翳をまとわせる。
浴槽の縁に逃げた優里を背後から押さえ付けた有栖川は、指先で胸の微かな隆起をつまみ、きゅっきゅっと力をいれて扱いた。すると、それまでふっくらしていた柔肉が硬くしこって勃ち上がり、コリコリした弾力性を指先に伝えた。
それを少し乱暴にぎゅっと押し潰すと、甘い痛みに悶える優里が「あぁん」と鳴いて腰を揺らした。
「そろそろ……出ましょうか。優里さんもどうやら、これが欲しくなってきたようですし」
耳許でねっとりと囁きながら、腰をいやらしくすり寄せる。とろりと白濁する湯の中で、限界を超えて膨張した肉塊が優里の腰にぐりぐりと当たった。
快楽を求める本能がそうさせるのか、優里は切なく鳴いてお尻をくいっと突き出した。
「おやおや、はしたないですよ、優里さん」
有栖川はからかいを含んだ声でそう言うと、長い指を割れ目に滑り込ませて蕾を探り、ぬるぬると撫でた。そして湯のとろみを借りて、期待に喘ぐ肉襞を掻き分けて指をつぷりと挿入した。
「ああっ……ぁ……ん………」
濡れた唇からこぼれる舌足らずな喘ぎがやけに艶めかしい。有栖川はそれにうっとりと耳を傾けながら、指を巧みに揺り動かして柔らかな粘膜に馴染ませていった。
あっという間にそこはとろとろに蕩け、と思ったら有栖川の指をさらに奥へと引き込むように蠕動する。有栖川は「いけない子だ」と嗤って、押し込んでいた３本の指をグリッと半回転させてから、一斉に引き抜いた。
いつの間にか浴槽の縁に掴まってお尻を突き出し、指による陵辱を積極的に受け入れていた優里は、「んぁっ」と鼻にかかる嬌声を上げてぶるんとお尻を揺らした。
有栖川はすかさず優里を抱き上げて浴室を出ると、表面の水気だけさっと拭き取ってそのまま寝室へ。月明かりのみに照らされ、頽廃の香気漂う褥に寝かされた優里の裸身は暈然と輝いて、月光に同化してしまいそうだ。
有栖川はぎらぎらとぬめる双眸でその華奢な輪郭を、甘やかな素肌を視姦する。もちろん、眺めたいのはそれだけではない。もっと秘めやかな部分もじっくり堪能したい。
有栖川は優里の肩を掴んでうつ伏せの姿勢を強要し、腰の下に枕を二つ重ねて置いた。その結果、優里の背中は弓なりに反り返り、高く持ち上げられた双丘が有栖川の眼前に晒されることとなった。
「さあ、この奥にはどんな景色が待っているのかな」
有栖川は誰にともなく浮かれた声で呼びかけると、両手の指を谷間に引っ掛けて、そのままぐいと左右に割り開いた。
「いやッ、いやァ………」
優里は込み上げる羞恥に耐えられず、シーツに顔を押し付ける。そんな恥じらいも、有栖川にとっては極上の媚態なのだが。
しかし今この瞬間に限って言えば、有栖川はそれどころではなかった。眼前に広がる余りに蠱惑的な光景に、あやうく暴発してしまうところだった。
浴室での戯れですでにむっちりと腫れ上がっていたソコは、外気に晒されてひくんひくんと妖しく蠢く。鴇色に潤む花唇を舌先でつつくと、くちゅ、と音をたてて淫らに収縮した。
有栖川は引き寄せられるように唇を寄せ、蕩ける襞に吸い付く。そしてびらびらした波を舌で強めに擦ると、下肢がぶるっと震えてすすり泣きが聞こえてきた。
「無垢で可憐な花だと思っていたのに………まさかこんな淫らな部分を持っていたなんて………」
有栖川が言葉を吐き出すたびに息がかかり、じれったいような刺激を生む。早く、早くこの疼きを蹴散らすほどの熱く激しい楔が欲しい。そんな優里の願いを知ってか知らずか、有栖川は舌を伸ばして収縮する孔にぬちゅ、と押し込んだ。
「あ、ぁ…ん………やん………」
指とは違った質感と動きに翻弄され、優里は腰を揺らめかせて快感を追った。浅い部分で小刻みに動く熱い舌は、鳩尾の奥をくすぐられるような甘痒い快楽をもたらした。
「あ……あ……おねがぁい……して、はや…くぅ…………」
優里は自分でも気付かぬうちに結合を乞うていた。有栖川はそれに応えるように舌を抜き、ずっと放置状態だった自身を無造作に掴んだ。
血管が浮き上がったそれは剣呑な陰翳を帯び、我ながらグロテスクな一物だった。しかも、先端からはだらだらと涎を垂らしている。
有栖川はその根元を持って角度を変え、焦点を優里の潤みに合わせたが、すぐに挿入はしない。谷間をなぞるようにそのままゆっくりと上下させる。
「ああ……はやく、はやくちょうだぁい…………」
たっぷりの愛液が潤滑油となって、ずるりと勢いよく滑る。陵辱を待つ蕾を擦り上げるたびに、面白いように腰が跳ね上がった。
「おねがい、おねがいぃ……挿れてぇ…………」
有栖川は歓喜の余り喉を鳴らしたが、まだ挿入しようとはしない。作り込んだ冷ややかな声で、
「欲しいのなら、こう言いなさい。有栖川さん、僕を犯してください、と」
「あ……あ、あ………」
優里は縮こまる舌を必死に駆り立てて、
「……して、有栖川さぁん、僕を犯してぇ…………」
有栖川はククッと毒のある含み笑いを漏らして、
「そんなに犯されたいですか、この淫乱め」
そしてガチガチに反り返る肉の楔で、優里の柔らかな尻を貫いた。
「きゃああああッ、ああっ、あああっ、い…い………」
一気に根元まで押し込んで、さらに優里の尻たぶが潰れるほど強く股間を押し付ける。隆矢との性交では、こんな奥まで穿たれたことはなかった。
悦びと戦慄で、優里の四肢が小刻みに痙攣している。有栖川は二度、三度と内臓を押し上げるような激しい注挿を繰り返したと思ったら、今度はカリの部分を入口にわざと引っかけて、グリ、グリ、と花びらをこすった。
その全てが途轍もない快感を生み出し、優里の視界に七色の星雲が現れる。腰の下の枕にぴちぴちに張り詰めたペニスをこすり付けると、ぞわりと痛いほどの電流が駆け巡って四肢を支配した。
「うっ……す…ごいな、これ…は…………」
優里が得た快感は肉壁の動きを活発化させ、貫いている有栖川の肉塊にダイレクトに伝わる。きゅぅっと締め付けたと思ったら、くにゅくにゅと蠢いていやらしく絡み付く。
わざとゆっくり引き抜くと、赤黒い陰茎に鮮やかな濡紅の粘膜が貼り付いて引き出される。そして再び突き上げると、ずちゅっと音をたててもつれるように押し込まれる。
有栖川は狂ったように腰を振ってその景色に見惚れながら、自分がどれほどこの身体に飢えていたかを思い知った。やがて―――
「あっ、あん、あ、ああっ………イ…クぅぅ…………」
蜜壷自体がうねりつつもぎゅっと収縮する。射精の前兆。有栖川はそれに合わせて、グゥンと角度をつけて奥を抉る。
「あっ、ああああああーーーーっ、あ、ああ…………あふぅ、ん………」
優里は全身を激しく痙攣させて、白濁した液体を腰の下の枕にじわじわと染み込ませる。有栖川は威嚇する獣のように喉をぐるぐる鳴らしつつ、煮え立つ精液を優里の中にたっぷりと注ぎ込んだ。
とはいえ、たった一度放出したぐらいで大人しくなるような分身ではない。有栖川のモノはまだ鋼の硬度を誇っていた。
それを優里に知らしめるように二度、三度と小刻みに揺すると、繋がった部分からじゅわっと白い蜜がしみ出てきた。
「いったん、抜きますよ」
ゆっくりと腰を引いて優里の中から引き抜くと、ぶるん、と飛沫を上げて再び天を指す。自身の中から太いものがずるりと抜かれる感覚に、優里は切ない声を上げた。
有栖川は優里の身体を起こして自分の方を向かせ、
「まだまだ足りないでしょう？ 分かってますよ」
勃ち上がった自身をこれみよがしに見せ付けた。優里は力なく首を振って、「もうゆるして…」と哀願する。そんな訴えなど取り合わないとばかりに鼻先で嗤い、有栖川は優里の弛緩した身体を持ち上げて自分の上に座らせた。
そして濡れた股間に指を這わせ、まだとろとろと精液を垂れ流している淫らな口に、指を３本まとめてぐじゅりと埋め込む。
「んっ………ふぅ…ん…………」
達したばかりで恐ろしいほど敏感なそこは、うねりつつも指に絡み付く。有栖川は満足そうに頷いて、あっさり指を抜いた。
「優里さん、僕の肩に掴まって。さあ……」
優里は朦朧としつつも、有栖川の命令に従順だった。魂まで慄えるような快楽を与えてくれる有栖川は、いまや優里にとって絶対的な存在となったのだ。
「そう、いい子……。そのままお尻を持ち上げて……」
肩に手を掛け、胸と胸をぴったり合わせた優里は、腰を優雅に反らせてお尻を持ち上げた。
有栖川は手を伸ばして快楽の色に染まった双丘を無造作に掴み、ぐいっと横に開いた。そして自身の切っ先を濡れた淫唇に宛がうと、重力の助けを借りつつずぶずぶとはめ込んでいった。
ついさっきまで大きく広げられていた優里の陰部は太い楔を難なく呑み込んで締め付けたが、内臓をずぅんと突き上げる勢いに極められ、有栖川の上でびくん、びくん、と二度跳ねた。
有栖川は奥を掻き回すようにゆったりと腰を揺らしながら、
「優里さん、自分で動いて、気持ちのいいところを探ってご覧なさい」
お尻の奥からじゅわっと広がる疼きに下肢を震わせながら、優里は言われた通り腰を上下に振って自ら奥を掘り進めた。そして、ある一点を有栖川の先端が掠めた瞬間、これまでのとは比較にならぬ電流が脳天まで駆け抜けた。
優里は喉を反らせて悲鳴を上げながら、その一点を貪欲に突く。有栖川はにやりと笑い、
「ここですか。分かりました。では、」
双丘に添えるだけだった手に力を込めると共に、腰をがくがくと突き上げて優里の秘められたポイントを容赦なく攻める。悦楽の悲鳴に喉を嗄らした優里は、呆気なく有栖川の上で射精した。
しかし有栖川の攻めはまだ止まらない。優里が何度達こうが関係ないとばかりに注挿を続け、優里の意識を白い闇の中に力づくで引きずり込んだのだった―――
「ん………まぶし…………」
優里が目を開けた時、太陽はすでに天頂近くに昇っていた。
「優里さん……目が覚めましたか？」
目をこすりつつ頷く仕草は相変わらずあどけないが、昨日までとは何かが変わってしまったことを、有栖川も当の優里も明瞭に意識していた。
「どうします？ 今から帰れば２時頃にはマンションに戻れますよ。それとも―――」
有栖川はすっと手を伸ばし、まだねっとりと湿っている優里の蕾に指を這わせた。すると優里の腰はひくんと揺れ、柔襞が指にぴったり貼り付いた。有栖川はからかうように引っ掻きながら、
「もっと、溺れてみますか？」
優里は深い溜め息をついて自ら脚を開き、有栖川の指を誘い込んだ。
そう、これでいい。隆矢は優里の心を射止めた。ならば自分は優里の身体を快楽の檻に閉じ込め、そこで徐々に飼い馴らしてゆけばよいのだ。
最終的にどちらを選ぶかは優里次第。もちろん、負け戦になど興味はないが。
「あなたはもう、逃げられないのです」
有栖川は瘴気すら漂う声でそう言い置いて、優里の貪欲な秘部に猛る肉塊を埋め込んでいった―――
（Fin）
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