チョコレートに託した想い
「で、できた……。尭村さん、喜んでくれるかな……」
出来上がった特大ハート型手作りチョコレート（甘さ控えめ）を前にして、純はしばし感慨に耽った。が、のんびりしている暇はないと自分に言い聞かせ、丁寧にラッピングして出かける準備をする。
「あらあ、チョコレートのいい匂い。純、できたのね？」
早紀ののんびりした声にちょっと得意げに頷き、
「これから、尭村さんちに届けてくるね」
「はいはい。寒いから気を付けてね」
「うんっ」
チョコが完成した興奮からかほんのり頬を赤らめて頷く純を、「その様子だと寒さなんて感じなさそうね」と笑って送り出す早紀だった。
これまで数え切れないほど何度もこの家を訪れたはずなのに、呼び鈴を押す前はいつも緊張してしまう。そう言うと尭村は「お前らしいな」と笑って、頭をわしわし撫でてくれる。その綺麗な笑顔と大きな手のひらから伝わる温もりが、純は大好きだった。
でも今日は、尭村に逢うつもりはなかった。明日、二月十五日は尭村が第一志望としている大学の受験日なのだ。このチョコを額賀に託して、そのまま真直ぐ帰るつもりだった。
『はい。どちら様？』
スピーカーから聞こえる額賀の応答に、純はしゃんと姿勢を正して応じる。
「こんにちは、秋原です。えと……尭村さんに届け物を――」
純が用件を告げるより早く、額賀の浮き立った声が答えた。
『これはこれは、秋原様。今すぐに門を開けますね』
そしてわずかな間をおいて、目の前の門が自動的に開いた。純が恐縮しつつ敷地内に進むと、玄関の扉が勢いよく開いて中から貴仁が飛び出してきた。
「純っ、久しぶりじゃねえか。会いたかったぞ〜。あのガキが受験だからって遠慮するこたねえんだぞ。俺の胸はいつだって空いてるんだからな」
そう言ってぎゅぅぅと抱き締めてくれる貴仁の身体からは、微かにテレビン油の匂いがした。きっと、アトリエで制作中だったにもかかわらず、迎えに出てきてくれたのだろう。
純は真っ赤に火照った顔を上げてにこっと笑い、「ありがとうございます」と心からの感謝を伝えた。すると貴仁は「くぅ〜」と悶え、
「そんな可愛い笑顔を見せ付けて、俺を萌え死にさす気かっ。ほら、早く中に入れ。今、額賀に温かいもの用意させるからな」
「い、いえっ、あの、今日はこれを届けに伺っただけなので。尭村さんに渡してもらえますか？」
純はあわあわしつつ、手に提げていた紙袋を差し出した。しかし貴仁は受け取らず、
「そういうことなら、直接届けてやれよ。ここ最近のあいつ、覇気がないっつーか精気に欠けるっつーか。しばらくお前に会ってないせいだろうな。情けなくて見てられねー」
「でも明日は大事な日で……」
「もし二人きりになって嫌らしいことしようとしたら、耳元で『サクラチル』って囁いてやれ」
純は思わず吹き出した。そして「分かりました」と答えると、尭村のいる離れに向かった。部屋の前でいったん呼吸を整え、扉を礼儀正しくノックしてから、
「尭村さん、あの、純です。届け物を―――」
全て言い終わる前に、室内からどたどたと慌ただしい足音が聞こえ、次の瞬間扉が凄い勢いで開けられた。すると温かな空気とともに尭村の匂いがふわりと漂い、純を優しく包み込んだ。
「純、どうしたんだお前、いきなり……」
戸惑いを隠せぬ様子の尭村に、純はさっき貴仁に見せた以上の輝く笑顔を浮かべ、
「尭村さん、ハッピーバレンタイン」
そう言ってリボンが掛けられた箱を差し出す。尭村は合点がいったのか、ようやく笑顔を返した。
「ああ、そうか。今日はバレンタインデーだったな」
「はい。あの、これ僕が作ったんです。甘さ控えめです。よかったら食べて下さい」
照れくささから早口で告げると、純は「明日がんばって下さい」と言い残して帰ろうとした。が、咄嗟に腕を掴まれ、そのまま部屋の中に引き込まれる。
「あ、尭村さんっ。僕もう帰らなくちゃっ―――」
尭村は左手にチョコレート、右手に暴れる純の身体を抱え、獲物を塒に連れ帰る獣のように揚々とソファに近づいた。そして純を抱いたままどさりと腰を下ろす。
「ひゃっ」
純は小さな悲鳴とともに、尭村の胸にしがみついた。すると尭村はその腰をがしっと拘束して、威嚇するような低音で、
「誰がもう帰るって？ え？」
「だ、だって……明日、試験……」
「今さらあたふたしたって結果は変わんねえよ」
純は尭村の膝の上でもじもじしていたものの、こくんと頷いて背中に腕を回し、首筋に頬をぺったり付けて甘えた。
尭村は嬉しさを隠し切れない様子で口許を綻ばせ、純の額やまぶた、鼻の頭にキスを落とす。やがて唇と唇を重ね合わせ、間をおかず滑り込ませた舌で純の口内を丹念に愛撫した。
唾液の弾ける音や、熱のこもった吐息、舌のこすれ合う音が室内を満たし、あと少しで飽和状態を迎えようとしたその時、
「成仁様、お茶をお持ちしました」
尭村は名残り惜しそうに舌をほどき、純の唇をそっとついばみながら、
「ったく、いいタイミングだよな」
そう言って苦笑しつつ立ち上がり、扉を開けて応対した。純はソファの上で丸まって、ほぅっと甘い溜め息をつく。
尭村に触れられて、身体中が歓喜にふわふわと浮き立っているのが分かる。そんな自分の単純さが面映くもあり、誇らしくもあった。
「どうした？ 純。顔が真っ赤だぞ」
戻ってきた尭村は、からかうように指摘して純の頬を撫でる。純がぷくっと膨れてみせると、尭村は楽しげに目を細めて丸い頬に口づけた。そして純が持ってきた包みを取り、
「さて、さっそくこいつをいただくとするか」
途端に純は姿勢を正し、「お口に合うかどうか分からないけど…」と殊勝な台詞を口にする。尭村はリボンをほどきながら、
「お前が作ったんだ。どんな岩みたいなチョコでも気合で食ってやるよ」
「ひどっ。岩よりはマシですっ」
「岩よりはマシって。それってけっこうキツくね？」
などと言いつつ、丁寧に包みを剥がして平たい箱を開けた。と同時に尭村は固まり、手の中の特大ハート型チョコを凝視する。次の瞬間、
「ぶはっ、これすげえ。はは、はははははっ……」
箱を抱えたまま身体を折って爆笑する。箱の中のチョコには、でかでかと『合格』の文字が。純は今にも破裂しそうなほど真っ赤になって、
「そっ、そんなに笑わなくたって……チョコで文字書くの慣れてないから、こんなへにょへにょの字になっちゃったんですっ」
『合格』の文字が今にも踊り出しそうなほど歪んでいるせいで尭村に笑われてしまったと思い込み、必死に弁解する純。
しかしもちろんそうではない。バレンタインらしいスイートな愛の言葉の代わりに、必死の想いをチョコレートに託すという行為があまりに純らしくて、可愛くて、笑い出さずにはいられなかったのだ。
それでも、純が涙目になっているのに気付いた尭村は、何とか笑いの発作を抑えた。そして純の身体を抱き寄せ、
「ありがとな。どんな有名神社のお守りより効力がありそうだ」
「ほん…と？」
「ああ、落ちる気がしねえよ」
「よかったぁ」
ようやく笑顔を見せた純に、尭村も笑みを返し、
「ああ……こんなに笑ったのは久しぶりだ」
バレンタインの贈り物に対する感想としてはちょっと微妙だったが、ともかく尭村が喜んでくれたのは確かなのだから、純も素直に受け入れることにした。
「よし。じゃあ食ってみるか。お、けっこう固いな」
尭村はハートのとんがり部分を折ろうとしたが、びくともしない。純はちょっと胸を張って、
「厚みを出すため、チョコレートをかなりの量使ったんです。素手で折るのは難しいかも。何か固いもので叩いて割らないと……」
「叩いて……割る？」
二人同時にその光景を思い浮かべる。『合格』の文字に亀裂が走り、ばらばらに砕け……
「さすがにそれは……縁起が悪いな」
そう言って苦笑を漏らす尭村に対し、純は青ざめ、
「ふぇぇ〜〜、食べる時のことまで考えてませんでした。ご、ごめんなさい……」
小さく小さくちぢこまって、消え入りそうな声で謝罪する。その身体を尭村は再び膝の上に抱き上げて、
「謝るこたねえよ。これは明日の試験が終わったら、ゆっくり味わわせてもらう。それでいいか？」
「は、はい。もちろんです。でも、せっかくのバレンタインデーなのに……やっぱりごめんなさい」
謝罪を重ねる純に、尭村は「そうだな…」と呟きちらとテーブルの上を見て、
「なら、あれをもらおうか」
視線の先では、先刻額賀が差し入れた二つのカップが淡い湯気をたてていた。中身はホットチョコレート。今日がバレンタインデーだからと、気を利かせたのだろう。
純はちょんと首を傾げたものの、尭村の求めるものをすぐに察して楚々と頷いた。そしてカップを取り、口を付ける。尭村の好みに合わせたのだろう、それはほろ苦く、かすかな洋酒の香りが鼻孔を抜けた。
純は罪のように甘く幸福のように苦い液体を口に含んだまま、唇を尭村の唇に押し付けた。そしてとろり、とろりと流し込む。やがて全てを注ぎ終わると、当然のように舌を搦め捕られた。
「あ………んっ、ん………」
ほのかに甘さの残る舌にねっとりと嬲られ、吸い上げられると、腰の芯にあるもう一つの淫らな心臓がどくんと疼く。そこを目指して凝集する熱を散らそうと、純は悩ましげに腰を振った。
するとその動きに応えるかのように尭村の手が伸び、ウエストの曲線をなぞりつつ股間へ。そしてかすかな隆起を慈しむように指先が這った。
「やっ……あ、んっ………」
純は執拗に舌を吸われながらも、腰を引いて愛撫の手から逃れようとした。しかし片手でがっしり抱え込まれた腰はびくともせず、熱を帯び始めた股間は尭村の指先にいいように弄ばれた。
やわやわと揉みしだかれたと思ったら、ぎゅっと握り込まれる。そのたびに純は全身をぶるっと震わせて、意志とは裏腹に尭村の身体にしがみついた。ようやく唇を解放した尭村は、深い口づけの余韻滴る唇を歪めて淫笑を浮かべ、
「さぁて、次はどこにチョコレートを掛けようか」
耳から注がれる甘いテノール、その媚薬めいた響きに純の五感は蕩かされ、ゆっくり、ゆっくりと快楽の淵に堕ちてゆく。それでもまだ、わずかに理性は健在だった。
―――ああ、だめ……このままじゃ……明日は試験なのに……
純は貴仁の言葉を思い出した。もし嫌らしいことしようとしたら、耳元で『サクラチル』と囁いてやれ―――
「あっ、いやッ……」
貴仁直伝の台詞を口にしようとしたが、それに先んじて尭村の手が下着の奥に這い入ってきた。純が必死に抵抗すると、その拍子にテーブルが揺れ、手作りの『合格』チョコレートが床に落下し―――
「あっ」
パキ、という乾いた音とともに真っ二つに割れた。
「あああ〜〜〜、合格が………」
純はすぐさま拾い上げ、『合』と『格』に別れたチョコレートを哀しげに見つめる。そして尭村に視線を移し、
「ほらっ、尭村さんが試験前にもかかわらずえっちなことしようとするから！」
「へえへえ、すいませんでした」
「もし落ちてもこのチョコレートのせいじゃないからねっ」
「おまえ〜〜、落ちるとか言うな」
「知らないもん」
拗ねた口調でそう言ってぷいっと横を向く純。尭村はその身体を後ろから抱き締めて、耳元で囁く。
「さっきの続きは、明日の試験が終わってからな。額賀にもっと濃いヤツ用意させるから」
そしてみるみるうちにぽおっと色づく柔らかな頬に、感謝と愛情込めて口づけを贈った。
（Fin）
（おまけ）
「ふわぁぁぁぁ〜〜〜、す、すごいですぅ。ライアン様ぁ、これどうしたんですか？」
帰宅したライアンが両手に抱えていたたくさんの包み。その中身を見たホイミンは、全身を真っ赤に染めて興奮を露わにした。
「チョコレート！ チョコレートがいっぱいですぅ」
華やかな包み紙やリボンで飾られた箱の中に入ったチョコレート。大きなハート型で何やら文字が書いてあるものや、色とりどりの小さなハートがぎっしり詰まったものもある。
どれもこれも美味しそうで、ホイミンは小さな目をきらきらさせてひとつひとつに見入った。
「いや、な……その、もらったんだよ」
「もらった？ こんなたくさん、誰にですか？」
「う、うーん、その……、まあ色んな人に、だ」
「ほえ〜〜」
ホイミンはいかにも感心した風に声を上げると、ライアンの表情を窺うように上目使いで見上げ、
「あ、あのぅ……このチョコレート、ライアン様が全部一人で食べるんですか？」
「はは、まさか。もちろんホイミンも食べていいぞ。ただし、」
ぴょんぴょん跳ねて喜びのダンスを踊るホイミンを、ライアンは厳しく見据え、
「いっぺんにたくさんは駄目だぞ。少しずつ食べること。分かったな？」
ホイミンは「はいっ」と返事しながら、チョコレートに囲まれた薔薇色の日々に思いを馳せたのだった。
その翌日、バトランド王からランチの招待を受けたホイミンは、王宮で楽しいひとときを過ごしていた。しかし、バトランド王との会話がホイミンに深刻な衝撃をもたらすことになった。
「ところでホイミン。昨日はバレンタインデーだったな。ライアンにチョコレートはあげたのか？」
「ばれんたいんでー……ですか？」
「おや、ホイミンは知らなかったのか。昨日、二月十四日はバレンタインデーといってな、好きな人にチョコレートを贈って愛を告白する日なのだ」
ホイミンは目を見開いたまま固まり、やがて口を震わせ、
「それで……ライアン様はあんなにたくさんのチョコレートをもらったんですね……」
手作りハート型のチョコレートには、ライアンへの想いが込められていたのだ。そうとも知らず、ぱくぱく食べてしまった自分の無神経さ。さらに、そんな大事な日のことを全く知らなかった呆れるほどの無知。
ホイミンの小さな身体を痛い自己嫌悪が駆け巡る。そんなホイミンの思いを察したのか、バトランド王は「ふむ」とうなり、
「知らなかったのなら仕方ないな。まあ、今からでも遅くはないと思うが」
ホイミンはぱっと顔を上げ、
「今からでも？」
「そうだ。ライアンへの感謝と愛をこめた手作りチョコレート。きっと喜んでくれると思うぞ」
ホイミンは瞳を輝かせ、と同時にそわそわし出した。バトランド王は笑って、
「さ、今日はもう帰りなさい。途中、街に寄ってチョコレートの材料を買って帰るといい」
「はいっ。王様、ありがとうございます！」
ホイミンは触手をぴっと整列させ、頭をぐいんと下げて挨拶すると、飛ぶように帰っていった。その後ろ姿を見送ったバトランド王は目を細め、少し淋しそうに溜め息をついた。
材料を買い揃え、エプロンを掛けてキッチンに立ったホイミンだったが、ここで考え込んでしまう。一体どんなチョコをあげればライアンは喜んでくれるだろうか。
「でっかいハート型？ う〜〜ん……」
ハートは愛の象徴。でも何かもっと相応しい形があるはずだ。ライアンへの想いを伝えるためにぴったりの形が。その時、
「あっ、そうだ！」
天啓のごとくアイデアが閃いた。ホイミンは嬉々として、そのアイデアを実現すべく作業に取り掛かったのだった。
その夜。帰宅したライアンはホイミンの様子にどこか違和感を覚えていた。何か言い出そうとするのだが、もじもじした挙げ句引っ込めてしまう。問い詰めてみようかとも思ったが、余計に萎縮させてしまうと思い直し、自分から告げてくれるのを待つことにした。
そして就寝時間。ライアンがベッドに横たわっていると、扉がそろそろと開いた。そして人間化したホイミンが入ってきた。
「あの……ライアン様。ちょっと遅くなってしまいましたが、ばれんたいんでーのプレゼントです」
「バレンタイン？」
ライアンは起き上がり、蒼い月明かりの中に立つホイミンを見つめた。ホイミンは両手を後ろに回し、恥ずかしそうに膝をすり寄せている。
「はい。今日、王様に聞いたんです。ばれんたいんでーは、大好きな人にチョコを贈って愛を伝える日だと。だからあの……一日遅れだけど、プレゼントです。僕を食べてください」
「な、なにッ？！」
最後の言葉に激しく反応するライアン。しかしホイミンは構わず、もじもじしつつも少しずつ近づいてくる。
「ライアン様ぁ、僕を食べてくれますか？」
くるんと大きな瞳ですがるように見上げられ、ライアンの頭も身体も一気に燃え上がった。
「ちょっ、ちょっと待て待て待て！！ それはそのっ、心の準備がっ。いやその、決して嫌だとか、そういうことではないんだぞ。むしろ歓迎で……って、違う！ 俺は何を言ってるんだっ」
いつになく積極的なホイミンに、すっかり恐慌状態のライアン。真っ赤になってあわあわしつつ支離滅裂なことを叫んでいると、ホイミンが後ろ手に隠していたものをぱっと前に差し出した。そして、
「はい、ライアン様。僕が作ったホイミン型チョコレートですぅ。食べてくださぁい」
「チョコ……レート？」
おにぎり型の頭に複数の細い触手。ホイミスライムの特徴が見事に再現された、特大チョコレートだった。
「は、はは……なるほど、僕を食べてください、か………」
力ない笑いをこぼしてがっくり肩を落とすライアンを見て、ホイミンは今にも泣き出しそうに顔を歪め、
「ライアン様……僕のチョコ、いらないですか……？」
「い、いやっ、そうじゃなくて……」
「僕ぅ……いっしょけんめ作ったんです。初めはハート型にしようかと思ったけど、僕の全てはライアン様のものです、っていう気持ちを伝えたくて、それで……」
予想外の深い想いが込められていたことを知り、ライアンは心の柔らかな部分が感動に震えるのを感じた。
「ホイミン、ありがとう」
ライアンは心からの感謝を告げると、チョコレートを受け取った。そしてまじまじと見つめていたが、やがて苦笑を浮かべ、
「ここまでよくできていると、逆に食べづらいな。お前の身体をばりばり食うなんて」
するとホイミンはふふっと笑い、
「ライアン様になら食べられてもいいですぅ」
含蓄ある言葉に思わず硬直するライアン。咄嗟に上を向いて、今にも溢れそうな鼻血をせき止めたのだった。
（Fin）
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